コラム(詳細)

第139回「事業用不動産の評価(その2)」

2016.04/18

経済レポート2570号[平成27年11月24日]掲載

  1. はじめに  事業用不動産の評価の2回目です。今般、改正された不動産鑑定評価基準では、証券化対象不動産の拡大を背景に、宿泊施設、レジャー施設、医療・福祉施設、ショッピングセンター等の商業施設等、当該事業の経営動向に強く影響を受けるオペレーショナルアセット型の不動産を事業用不動産と定義し、その評価方法等を充実化しています。
    今回は、事業用不動産の特性と評価にあたっての基本的な考え方についてとりあげます。
  2. 事業用不動産の特性  事業用不動産は、オフィスや共同住宅といった典型的な賃貸物件に比べて、物件毎の収益性のばらつきが大きい、賃貸市場が未成熟である、当該施設を利用して行われる事業の経営動向に強く影響を受けるといった傾向があります。
    事業の運営形態についても、直営方式、運営委託方式、賃貸方式、賃貸運営委託方式等多様であり、その運営形態に応じて収益の把握の仕方や実現性の程度が異なる場合があります。
    また、同一の事業であっても業態によって事業特性が大きく異なります。(例えば、ホテルでも、シティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテルの別等)
  3. 評価の基本的な考え方  この様な事業用不動産の特性から、収益還元法を適用する場合の基本的な考え方は次のとおりとなります。
    まず、大前提として事業用不動産の収益は、当該事業採算の範囲内であることが通常であること。この場合、現実の運営者でなく、通常想定される事業者による運営を前提に収益性を把握すること。(対象不動産自体のポテンシャルに基づく評価であり、ポテンシャル評価等といわれています。)
    次に、収益性の分析方法としては、実際の経営状況の把握(内部環境の分析)、事業経営の外部環境、トレンド等の分析に基づき中長期安定的な観点からの収益性の把握が求められます。
  4. 最後に  では、現在の運営者が、通常よりも優れた能力を有することによって生じる超過収益力はどの様にみるべきでしょうか?基本的には不動産に帰属するものではない(=評価には影響しない)とされていますが、いわゆる「歩合賃料制」が約定されている場合等においては、超過収益力の一部が不動産に帰属する場合もあるとされています。
    次回は、具体的な評価プロセスについて言及します。

以上

 

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