コラム(詳細)

第10回「特定価格」

2004.12/21

経済レポート2045号[平成16年12月21日号]掲載

 価格の種類には、正常価格、限定価格、特定価格、特殊価格があり、評価の目的や条件に即してどの価格を求めるのかを明確にすることが必要です。前回は、正常価格と限定価格について触れましたので、今回は、特定価格をとりあげます。
特定価格とは、「市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう」と定義されています。
一般の売買価格(正常価格)とは異なる価格を求める場合としては、投資採算価格、早期売却を前提とした価格、事業の継続を前提とした価格等があります。

  1. 投資採算価値
    通常の売買価格(正常価格)は基本的には需給関係を反映した売買市場で決定されます。ところが、あるビルを証券化しようとする場合には、証券化された不動産は一種の金融商品ですから、投資家に示すための投資採算価値が必要となります。この投資採算価値の判定にあたってはキャッシュフローと割引率(利回り)が重視されます。
    不動産はスペース(空間)が価値を決めるといわれていますが、証券化されたものはキャッシュフローと割引率が基本的な価値を決め、評価としてはキャッシュフローを割引率で割引くDCF法(ディスカウンティッドキャッシュフロー法)が中心となります。
    昨今、証券化は次々と行われているため、不動産の金融商品化・収益価値重視の傾向が強まり、このトレンドが、一般の不動産にまで及びつつあります。
    なお、今、はやりの証券化ですが、会社の資産を一般の売買価格(正常価格)より、著しく低い価格で証券化した場合には背任行為ともなりかねませんので注意が必要です。
  2. 早期売却等
    不良債権処理や民事再生法・会社更生法の評価にあたっては、その局面に応じて求める価格が異なってきます。一般には不動産を早期に処分する必要があることから、早期の売却を前提とすることとなりますが、場合によっては、事業を継続することを前提とした事業継続価値を求める場合もあります。
    なお、ひとくちに処分価額といっても、直ちに処分するの意、スクラップにするの意、事業継続価値で直ちに処分するの意などがあり、現場ではこれらの意が相当混乱して用いられていますので、注意が必要です。
  3. 最低売却価額
    裁判所の競売において定められる最低売却価額も強制競売の方法による売却を実施するための評価であることから、一般の売買価額とは異なります(ただ、最低売却価額を特定価格の範ちゅうに入れるか否かについては議論があります)。
    なお、先の国会で最低売却価額は売却基準価額と改正され、これを2割下回る価額以上の額での買受け申出を認めることとなりました。これについては、またの機会に詳しくとりあげたいと思います。

以上