「ドラッカー流 不動産鑑定士の条件」
~ドラッカリアン鑑定士「不動さん」と駆け出し鑑定士「鑑助くん」のストーリー~

  • 1.導入 introduction

     経営学の父、経営コンサルタントの創始者などと呼ばれるピータードラッカーは沢山の名言を残しています。ドラッカーの著書には、あのマネジメントをはじめ、経営者の条件、プロフェッショナルの条件等があります。このコンテンツは「もし、ドラッカーが不動産鑑定士の条件を書いたら」との着眼から生まれたオリジナルストーリーです。

  • 2.必要な資質、ドラッカーはそれを「Integrity(真摯さ)」と言った

    不動さん 不動さん

    鑑定歴20年の不動産鑑定士。現在弟子の鑑助くんを指導中。自称ドラッカリアン鑑定士。

    鑑定くん 鑑定くん

    駆け出しの不動産鑑定士。不動さんの元で現在修行中。

    • 厳しいプロは高い目標を掲げ、それを実現することを求める。誰が正しいかではなく、何が正しいかを考える。頭の良さではなく、「真摯さ」を大切にする。つまるところ、この「真摯さ」なる資質に欠ける者は、いかに有能で頭がよくとも危険であり、不適格である。
    • 信頼とは「真摯さ」への確信である。
    • どうしても身につけていなければならない資質がある。
      才能ではなく、「真摯さ」である。
    不 動さん :
    「鑑助くんは、ドラッカーは知っているかい、実は、僕はドラッカリアンなんだ。ドラッカーは、不動産鑑定士にどのような資質を求めるのだろうか?」
    鑑助くん :
    「やはり適正な価格を査定する能力、いわばプライシング力とか、確かな仕事をする能力ですかね。ヒョッとして意外と体力とか営業力とか言ってたりして。」
    不動さん :
    「聞き方が少しまずかったかな。ドラッカーは、まず、もっと根本的というか普遍的というか、ある気質的なことを言っているんだ。ドラッカーの著書には、たびたび、「integrity of character」という言葉が登場するね。ドラッカーはプロフェッショナルやマネージャーに必要な特別な資質はただ一つ「integrity」だと言い切っている。これは、単に「真摯さ」と和訳されることが多いけれど、実に奥深い意味があると思うんだ。」
    鑑助くん :
    「正直であること、信念をもつこと、仕事に打ち込むこと・・・って意味ですかね?僕にはまだよく分かりませんが・・・そういえば倫理観、コンプライアンスという解釈もあるのかな?」
    不動さん :
    「うーん、なかなか日本語にするのは言いにくいような気もするな~。」
    鑑助くん :
    「あ、それって、僕にとっては、「仕事で手を抜くな!」っていうことですか。なんだか身につまされました。」
  • 3.そんなことはない。神々が見ている。

     紀元前440年頃、ギリシャの彫刻家フェイディアスはアテネのパンテオンの庇(ひさし)に建つ彫像群を完成させた。それらは今日でも西洋最高の彫刻とされている。だが彫像の完成後、フェイディアスの請求に対しアテネの会計官は支払を拒んだ。彫像の背中は見えない。誰にも見えない部分まで彫って、請求してくるとは何ごとか。それに対して、フェイディアスは答えた。そんなことはない。神々がみている。

    不動さん :
    「これは、完全な仕事とは何かといった趣旨の話なんだけれど、鑑助くんはどう思う?」
    鑑助くん :
    「アテネの会計官にしてみれば、芸術性の問題は別として、背中の彫刻までは業務の範囲に入っていないってことですかね。アテネの会計官の主張もわかる ような気もします。」
    不動さん :
    「そうだね、この話は、彫刻家にしてみれば完全な仕事をやり遂げた。一方で、依頼者の立場に立ってみれば余分な仕事をしたともとれるよね。ビジネス面に限定して考えれば、背中を彫刻することによって、料金が加算されていたり、必要以上に時間がかかっていれば、問題となる可能性もあるよね。
    仕事を引き受けるときには、事前の打ち合わせをしっかりとすることが大切なんだ。私もこれには最も神経を使っているよ。」
    鑑助くん :
    「ボタンの掛け違いってやつですね。」
    不動さん :
    「ドラッカーはこうとも言っているよ「相手の言葉を使う、相手の期待を知る、相手の気持ちに合わせる」これらは、コミュニケーションの大切さを説いたものだね。」
    鑑助くん :
    「う~ん、相手の言葉を使うか・・・・オカマバーの評価は僕に任せて下さい。」
  • 4.ドラッカーにとって不動産とは

    (アウトプットを中心に考える)

    「仕事を生産的なものにするには、成果すなわち仕事のアウトプットを中心に考えなければならない。技能や知識などインプットからスタートしてはならない。技能、情報、知識は道具にすぎない。」

    -the end product, the out put of work-

    (自ら現場に出かけなければならない)

    予期せぬ失敗が要求することは、トップマネージメント自身が、外へ出て、よく見、よく聞くことである。

    -go out, look around, and listen-

    (データを情報に変える者)

    データの生産者は、その利用者が情報を手にするためにいかなるデータを必要としているかは知りようがない。
    データを情報に変えるものは、知的労働者本人しかありえない。

    -can convert date into information-

    不動さん :
    「ドラッカーは、不動産に関して直接的な言葉は残していないが、不動産を連想させる言葉を拾ってみたんだ。ドラッカーは、不動産を基本的には生産財の一種として認識していると思う。「アウトプットを中心に考える」とは、成果に見合った投資、すなわち、収益還元法的な発想をしているんだと思うよ。」
    鑑助くん :
    「自ら現場にでかけなければならないとは、現地調査のことですかね。」
    不動さん :
    「そうだな。これは、経営的には、現場主義のことを言っているんだよ。我々が行う不動産の現地調査では、見て、聞いてどころか、あらゆる感覚を研ぎすますことが必要だ。これが現地での目利き力につながるんだ。」
    鑑助くん :
    「データを情報に変える者は、すなわち、これ、不動産鑑定士っていうオチですか?」
    不動さん :
    「オチは今からだよ、ドラッカーは、「汝の時間を知れ!時間を管理できなければ何も管理できない」と時間のマネジメントにはうるさいんだ。」
    鑑助くん :
    「鑑定評価で使う、割引率などには現在価値と将来価値の違いといった時間的価値も反映されてますよね。」
    不動さん :
    「ところで、時間についてはこうも言っているよ。「重要な仕事には締切を設けなければならない」と。」
    鑑助くん :
    「そう言えば、あの評価書の締切は・・・・。トホホ、今夜は徹夜だな。」
  • 5.a REVOLUTION

    自らをマネジメントするということは、一つの革命である。

    -Managing oneself is a REVOLUTION in human affairs.

    不動さん :
    「今日は少しかしこまって、鑑助くんの将来について大切な話をしよう。」
    鑑助くん :
    「まさか首だなんて言い出すんじゃないでしょうね!」
    不動さん :
    「ドラッカーは、これからは「テクノロジスト(高度技能者)が重要だ」と言っているんだ。私は、不動産鑑定士もテクノロジストとして認知されるべく一層の努力が必要だと思っているんだ。」
    鑑助くん :
    「なんだか、話が飛躍してきましたね。」
    不動さん :
    「今日まで鑑助くんには私の全てを叩き込んだつもりだ。「自らが教える時に最もよく学ぶ」ドラッカーの言ったとおりだったよ。私も大変勉強になった。さて、これからの鑑助くんに最も相応しいドラッカーの言葉を君に贈るよ。」
    • 自らの強みに集中せよ!
    • 「私は」ではなく、「我々は」と考えろ!
    • 自分という人材をプロデュースせよ!
    鑑助くん :
    「ありがとうございます。これで僕も卒業ですか?」
    不動さん :
    「卒業と考えるのも悪くない。でも、次の言葉も肝に銘じておくんだよ。」

    ゴールに達したと考えることは誰にも許されない

    鑑助くん :
    「トヨタの「カイゼン」にも通じるところがありますね。厳しいご指導ありがとうございます。ところで、僕にもひとこと言わせてください。」

    失敗を部下の無能や偶然のせいにしない
    システムの欠陥の兆候と見よ

    不動さん :
    「う~ん、ありがとう。これで鑑助くんも立派なドラッカリアンだ。」
  • 6.「最後に」

    いかがでしたでしょうか。
    もし、本当にピータードラッカーだったら、このニッチで個別生産の不動産鑑定業をどのようにコンサルティングしたでしょうか? ドラッカーは不動産に関して直接的な言葉を残していませんが、ドラッカー流に言えば「不動産のことは不動産に聴け」とでもいうのでしょうか?

     ポーターであれば「代替品の脅威に備えよ」と競争戦略論を展開し、コトラーは「調査データはときにウソをつく」と警告を鳴らし、ランチェスターは「日本にピータードラッカーはいない。小さなナンバーワンを目指せ」と弱者戦略の徹底を促すのでしょうか?

     ところで、稲盛和夫氏の次の名言も最近ひしひしと身に染みます「値決めは経営そのものである。それは経営者の能力と経営哲学の反映だ」

     私は31歳のときに不動産鑑定士になりました。50にして天命を知るどころか、40にして惑わずの境地にも今だ達しておりせん。もし、孔子が弊社のホームページを見たら、「巧言令色、鮮矣仁」とでも戒めるのでしょうか。

    制作会社の(株)フォノグラムに感謝します。

    kazuo ogawa

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