コラム(詳細)

第52回「CRE戦略(その10)…財務指標を用いたCRE評価(株価純資産倍率について)

2008.07/22

経済レポート2217号[平成20年7月22日]掲載

  1. はじめにCRE戦略(企業用不動産戦略)シリーズの第10回目です。財務指標を用いたCRE戦略のうち本稿は「株価純資産倍率」についてです。
    株価純資産倍率(PBR:Price BookvalueRatio)は、株価が1株当たりの純資産(簿価)の何倍あるかを示すものです。

    株価純資産倍率の図式

  2. 具体例1株当たり純資産とは、すべての負債を支払ったあとに残る資産、すなわちその会社の理論上の解散価値を示すものです。したがって、株価純資産倍率(PBR)が、1倍を下回る状態にあるときは、解散価値よりも低い評価がなされている(株価総額が解散価値を下回っている)ことを意味しています。継続的に事業を行うより解散した方が株主の利益となる可能性があります。また、企業買収のターゲットにされやすいとも考えられます。
    ただ、1株当たり純資産はあくまで簿価ベースですので、時価との開差が大きい場合には注意が必要です。
    なお、業界別に特徴が出る傾向が強いことから、同業他社と比較を行うことが望ましいとされています。
  3. 最後にこの株価純資産倍率(PBR)は、株式への投資家からみた場合には、企業の資産面から株価の高低を相対的に測る指標と位置づけられます。一般論としては株価純資産倍率(PBR)が低いほどその株式は割安であり、高いほどその株式は割高であると判断でき、割安株や底値圏を探す指標としても用いられています。
    また、今日最も一般的に株価水準を判断する指標としては、株価を1株当たりの純収益で割って求める株価収益率(PER:PriceEarningsRatio)があげられます。株価収益率(PER)が株価と利益(フロー)の関係を表しているのに対し、株価純資産倍率(PBR)は株価と株主資本(ストック)の関係を表しており、両者は、株価の相対水準を示す指標として組み合せて活用されています。

(参考文献)
CRE戦略を実践するためのガイドライン(国土交通省)
企業価値評価(伊藤邦雄著)等

以上