コラム(詳細)

第74回「支払賃料と実質賃料」

2010.06/29

経済レポート2310号[平成22年6月29日]掲載

  1. はじめに

    前回、敷金、権利金、更新料等の一時金についてとりあげました。それでは、一時金の多寡によって賃料はどの様に異ってくるのでしょうか?極端な設定ですが、次の物件Aと物件Bを比較してみましょう。

    〔設例〕

    物件A・・・月額家賃100万円、敷金300万円(3ヶ月分)

    物件B・・・月額家賃99万5千円、敷金995万円(10ヶ月分)

  2. 支払賃料と実質賃料毎月支払う賃料は物件Bの方が低額ですが、資金の運用益(年利1.5%と仮定)まで考慮すれば、物件Aの方が割安となります  評価上は、各支払時期に支払われる賃料を「支払賃料」といい、一時金の運用益や償却額等を加えた貸主に支払われる全ての経済的対価を「実質賃料」といい定 義づけしています。
  3. 実質賃料の求め方

    賃料の比較は実質賃料で行うことが原則であり、実質賃料は次のとおり求められます。

    [1]支払賃料 + [2]敷金等の預り金的性格の一時金の運用益 + 

    [3]礼金等の賃料の前払的性格の一時金の運用益及び償却額 + 

    [4]共益費等のうち実際の費用を上回り実質的に賃料を構成するもの = 実質賃料

  4. 最後に

    最後に、賃料や立地条件は物件の選定にあたって重大な要素ですが、平成16年の民事執行法の改正に伴い短期賃貸借制度は廃止され、競売となった場合には、 抵当権者の同意制度を利用しない限りはテナント(借主)はほとんど法的な保護が受けられないこととなっています。最悪の場合、[1]突然の契約中途での立 退き、[2]敷金が返ってこない、[3]内覧のオプションを行使されれば内部を見学されるといった事態にもなりかねません。所有者の資産状況、抵当権の設 定の状況、抵当権者の属性・同意の有無等も大切な要素と思います。

以上