コラム(詳細)

第98回「減価償却と不動産評価(その2)」

2012.11/09

経済レポート2406号[平成24年6月26日]掲載

  1. はじめに  減価償却には様々な側面(機能、役割)があります。前回は、時の経過に伴う価値減(減価)の側面から、資産評価の尺度としての減価償却についてとりあげ、具体例として建物評価における原価法を掘り下げました。
    今回は、取得した(投下した)資金の回収との側面から減価償却と不動産評価についてアプローチしてみます。
  2. 取得した(投下した)資金の回収としての減価償却  取得した(投下した)資金の回収としてみた場合の減価償却は、「自己金融効果」等と表現されることもあります。毎期、減価償却費を計上しても、実際に現金は支出されませんので、帳簿上の利益は減少するものの、お金は手元に残ります。したがって、資産の買換え等に必要な資金を内部留保できるわけです。
    不動産評価上、最もこの考え方を反映しているのは「賃料評価における積算法」です。
  3. 賃料評価における積算法  賃料評価における積算法とは、基礎価格(いわゆる元本価格)を求め、これに期待利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法です(この手法による試算賃料を積算賃料といいます)。
    必要諸経費等としては、減価償却費、維持管理費、公租公課、損害保険料、貸倒れ準備費、空室等による損失相当額があり、減価償却費も計上します。
  4. 最後に  以上が賃料評価における積算法ですが、上式からもわかるとおり、この積算法は、投下資本の回収との観点であり、どちらかといえば、家主(オーナー)サイドに立つものです。最終的には、「マーケットに基づく賃貸事例比較法」や「家賃負担能力の立場から収益分析法」を併用し、諸般を勘案のうえ、賃料評価額を決定することとなります。

以上