コラム(詳細)

第110回「複合不動産の評価」

2013.11/20

経済レポート2454号[平成25年6月25日]掲載

  1. はじめに  更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいいます。更地として土地のみを評価するとは、実際には地上に建物が存在していても、当該建物が存在しないことを想定して(前提として)評価を行うことをいいます。この更地評価は、我が国では、道路買収等の際の公共用地の補償や税務上の評価等多くの局面で採用されていたり、考え方がとり入れられています。これは、土地と建物を別々に(別個のものとして個別に)評価する制度ともいえます。
       一方、この更地評価に対して、地上に存在する建物も含めて、土地・建物を一体の不動産として捉える評価を複合不動産の評価といいます。今回は複合不動産の評価をとりあげます。
  2. 複合不動産の評価の典型例  複合不動産の評価の典型例は、いわゆる賃収物件などといわれる不動産です。例えば貸ビルの評価にあたっては、基本的に賃料収入に基づくキャッシュ・フローを前提とした収益還元法による評価額が中心となるため、土地・建物一体として生み出す収益、すなわち、土地・建物一体としての価値を求めることとなります。
       この様に複合不動産については、土地価格と建物価格を個別に求め合計するとの考え方ではなく、逆に、先に土地・建物一体としての評価額を決定し、その内訳として土地と建物に配分(按分)する方法が主流となります。
  3. 個別評価との相違  土地と建物を別々に評価する個別評価と、複合不動産として一体として評価する場合、大きな相違が生じる原因としては建物の状態があげられます。例えば、建物の老朽化が著しい、場違いな建物が建築されている等のケースでは、最有効使用や市場参加者の取引行動等からみて、状況によっては建物の取壊しを前提とした評価が行われることもあります。この場合は、更地価格から建物取壊費用を控除したものが、土地・建物一体としての評価額となります。
       逆に、個別評価の立場からは、建物を取壊すという評価はありません。
  4. 最後に  我が国の不動産鑑定評価基準は、土地(更地)の評価を中心に昭和39年にスタートしました。複合不動産の評価については多くの課題もあります。昨今の不動産証券化の進展、企業会計の時価評価の導入、中古住宅の評価等、複合不動産に対する評価ニーズが高まっています。近々改正が予定されている不動産鑑定評価基準の見直し案でも、これらのニーズに対応するため、評価手法の充実、精緻化、明確化等の一方、種類に応じた簡易な手法の導入についても検討されています。

以上