コラム(詳細)

第173回「裁判所のなかの不動産鑑定…その4競売評価」

2019.02/12

経済レポート2705号[平成30年9月18日]掲載

  1. はじめに  シリーズで「裁判所のなかの不動産鑑定」を連載しています。4回目の今回は、不動産競売評価(以下単に「競売評価」といいます)についてとりあげます
       競売評価は、裁判所が、所有者の意思とは無関係に、強制的に不動産を売却して金銭化する手続のなかで実施される評価です。その圧倒的多数は、強制競売や担保不動産競売ですが、まれに、共有物分割等のために競売が実施されることもあります。(形式競売)
  2. 評価人   競売手続きが開始されると、執行裁判所は、相当と認める者(実務では不動産鑑定士)を評価人に選任し、不動産の評価を命じます。また、執行官に対しては不動産の現況を調査するよう命令します。これによって、評価人は「評価書」を、執行官は「現況調査報告書」を作成することとなります。
       ちなみに、入札の検討にあたっては、この2つに裁判所書記官の法律関係等に関する認識を記載した文書である「物件明細書」を加えて3点セットといいます。これらはインターネット上でも閲覧が可能です。
  3. 評価    競売評価において、通常の評価と最も異なる点は、「評価人は、強制競売の手続きにおいて不動産の売却を実施するための評価であることを考慮しなければならない」とされていることです。これは競売不動産特有のマイナス要因(居住者が任意に退去しないリスク、瑕疵担保責任がないこと等)を減価すべきことを意味しており、この減価を「競売市場修正」といいます。
       では、この競売市場修正は具体的にはどの様な修正率が使われているのでしょうか。この修正率は常に一定ではなく、また、市場の動向や地域性、執行裁判所等によっても異なり、適宜見直しも行われています
       例えば、東京地裁においては管轄区域内の市場の動向および最近の競売市場の需要の動向を考慮して、東京23区内の物件については種類を問わず、平成29年3月1日以降、従来の▲30%から▲20%に変更するとしています。(新民事執行実務No.15の「東京地方裁判所(本庁)における平成28年の民事執行事件の概要」)
  4. 最後  裁判所で行われる競売を巡っては、不良債権処理問題や規制緩和の動きのなかで、かつては、評価そのものや最低入札価格の廃止論、民間競売制度の創設等が検討された時期もありました。
       競売については、時間がかかる、二束三文で売られている等の風評もいまだにある様ですが、手続の透明性が確保されていることはもとより、近年は時代に即して適正迅速化がなされていると同時に、競り売りのため意外と高く売れるとの評もあるようです。
     

以上

参考文献:民事執行・保全15講(内田義厚 著)
   監修:弁護士法人 御堂筋法律事務所 広島事務所
 

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