第15回「取引事例比較法と土地取引価格情報提供システム(その1)」
2005.06/28
経済レポート2069号[平成17年6月28日号]掲載
今回は、まず、不動産評価の3方式(原価方式、比較方式、収益方式)のうちの比較方式である「取引事例を基に求める取引事例比較法」について概説します。そのうえで次回は、国土交通省が今夏から実施予定である「土地取引価格情報提供システム」についてとりあげます。
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取引事例比較法とは
多数の取引事例を収集して、それらの取引と比較することによって、対象不動産の価格を求める手法です。評価しようとする不動産と類似性の高い取引をどれだけ多く集められるか。比較をどれだけ適切におこなえるかがポイントとなります。
具体的な比較等の事項は次のとおりです。・事情補正
取引のときの特別な事情の補正、売急ぎ等
・時点修正
取引時点と評価時点との違いによる修正
・地域要因の比較
取引事例地と評価対象地の地域性の比較
・個別的要因の比較
それぞれの不動産の固有の特性、角地、不整形等の比較
- 具体例
備考 [1] 取引価格 1,000,000円 評価の基となる実際の取引価格 [2] 事情補正 X 100
(90)
10%安で取引された [3] 時点修正 X (95)
100
5%下落した [4] 取引事例地の個別的要因 X 100
(105)
取引事例地は角地で5%価値が高い [5] 地域要因の比較 X 100
(120)
地域的にみて取引事例地の方が20%価値が高い [6] 対象地の個別的要因 X (95)
100
対象地は不整形で5%価値が低い [7] 対象地の価格 ≒ 796 , 000円 ([1]×[2]×[3]×[4]×[5]×[6]) (注)実際には複数の取引事例を採用するのが通常です。
以上