第60回「不動産リスク(その2)…ER」
2009.03/24
経済レポート2249号[平成21年3月24日]掲載
- はじめに不動産のリスク対策として最近はデュー・ディリジェンス(略称でDDとかデューデリといわれます)を実施することが多くなりました。このデュー・ディリジェンスでは、通常、法的調査、経済的調査及び物的調査の3つを実施しますが、今回は物的調査の柱となる「エンジニアリング・レポート(略称ER)」についてとりあげます。
- エンジニアリング・レポート(ER)とはエンジニアリング・レポート(ER)とは、建築物・設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った不動産の物理的状況に関する報告書のことをいいます。
その内容は、BELCA(社団法人建築・設備維持保全推進協会)のガイドラインによれば次の4つの報告書を指します。- 建物状況調査報告書
[1]立地概要調査、[2]建築概要調査、[3]設備概要調査、[4]更新・改修履歴及び更新・改修計画の調査、[5]構造概要調査、設計基準、[6]遵法性、[7]緊急を要する修繕更新費用、[8]短期修繕更新費用、[9]長期修繕更新費用、[10]再調達価格の算定 - 建物環境リスク評価報告書
[1]アスベスト、[2]PCB、[3]その他の項目 - 土壌汚染リスク評価報告書
[1]土地利用の履歴、[2]土壌汚染の可能性 - 地震リスク評価報告書
[1]対象敷地における地震危険度、[2]対象建物の耐震性、[3]PML算定(Probable Maximum Loss)、[4]事業中断期間の予測
- 建物状況調査報告書
- 最後に証券化される不動産については、原則としてこのエンジニアリング・レポート( ER)が必要とされますし、上記の4つ以外にも、さらに「地下埋設物」及び「耐震性調査」等も求められます。また、一般の不動産取引においても、最近は取引上の瑕疵発生回避の観点から、遵法性、修繕費、地震リスク、土壌汚染、アスベスト・PCB等の項目の全部あ るいは一部の調査を実施することが多くなりました。但し、このエンジニアリング・レポート(ER)は調査方法の限界等に起因して、絶対的なものではないこ とがありますので免責事項等については十分な留意が必要です。
以上