コラム(詳細)

第62回「不動産リスク(その4)」

2009.05/26

経済レポート2257号[平成21年5月26日]掲載

  1. はじめに
    不動産リスクシリーズの第4回です。前回、環境債務とりわけ資産除去債務についてとりあげました。これは、将来(例えば将来建物を解体するときに)汚染物質を処分する場合に必要となる費用を現時点で(建物を解体する前から)資産除去債務として認識し、財務諸表にも反映させるという考え方でした。
  2. 不動産(有形固定資産)に関する資産除去債務
    それでは、不動産(有形固定資産)に関する資産除去債務には具体的にはどの様なものがあるのでしょうか。以下が主なものですが、近い将来「かび」も大きな問題として認識される可能性があるのではないかといわれています。

    物 質 名 等 所 在 等 主な関連法等
    *条件等は含まない
    重金属・VOC・油
    PCBその他
    土壌 土壌汚染対策法
    建設リサイクル法
    PCB 蛍光灯・水銀灯安定器、
    トランス・コンデンサ
    PCB廃棄物特別措置法
    廃棄物処理法、建設リサイ
    クル法
    ハロン 消火機器 フロン回収・破壊法
    家電リサイクル法、高圧ガ
    ス保安法、消防法、建設リ
    サイクル法
    フロン ターボ冷凍機、パッケージ
    エアコン
    飛散性アスベスト
    (レベル1)
    吹きつけアスベスト 石綿障害予防規則
    大気汚染防止法
    廃棄物処理法
    建築基準法
    建設リサイクル法
    労働安全衛生法
    飛散性アスベスト
    (レベル2)
    煙突断熱材・配管保湿材
    飛散性アスベスト
    (レベル3)
    アスベスト含有ケイ酸カル
    シウム板(天井・壁)
    砒素 石膏ボード 建設リサイクル法、廃棄物
    処理法
    非常用電源の電池 資源有効利用促進法
    建設リサイクル法
    カドミウム 石膏ボード、非常用電池等 建設リサイクル法、廃棄物
    処理法
    ダイオキシン類 廃棄物焼却炉 ダイオキシン類対策特別措
    置法、建設リサイクル法
    水銀 蛍光灯 建設リサイクル法
    臭化リチウム 吸収式冷凍機 建設リサイクル法
    (出所) 建築副産物リサイクル広報推進会議「建築物の解体等に伴う有害物質等の
    適切な取り扱い」パンフレット、各種環境法等よりみずほ情報総研作成。
  3. 国内の環境債務の規模
    現在の日本の有形固定資産に蓄積されている汚染や有害物質の処理費用は相当な規模であることが予想されています。ある調査によれば、土壌汚染が13~30兆円、アスベストが10兆円以上、PCBは4,000億円~1兆円程度と試算され、全体では20~40兆円以上となる可能性が指摘されています。このような負の遺産は早期の取組みが必要ですが、一方で税制等の政策的な支援の必要性も重要と思われます。

(参考文献)
・CRE戦略を実践するためのガイドライン(国土交通省)
・環境債務の実務(藤井良広編著)等

以上