コラム(詳細)

第73回「一時金」

2010.05/25

経済レポート2305号[平成22年5月25日]掲載

  1. はじめに
    平成21年8月27日、大阪高裁において、建物賃貸借契約に係る更新料の支払特約が消費者契約法に反し無効である旨判示されました。今後の最高裁の判断が注目されるところです。そこで今回は「一時金」についてとりあげます。

  2. 一時金とは

    一時金とは、不動産の賃貸借契約に関して、借主から貸主に対して一時的に支払われる金銭等のことをいいます。必ずしも法的性格は定められてはいませんが、実務上の取扱い等に基づいて、その性格に応じて一般的には次の様に分類されています。
    なお、この一時金には、敷金、権利金など新規の契約締結時に支払うものと更新料、名義書換料など継続時に支払うものとがあります。

    一時金の性格による分類
    1. 預り金的性格を有するもの
      「敷金」、「保証金」、「建設協力金」等が該当し、それぞれ次の様な役割をもちます。
      ・敷金     賃料滞納等の契約の不履行に基づく損害賠償の担保
      ・保証金    中途解約を抑制する役割
      ・建設協力金  建設資金の立替えという金融的役割
    2. 賃料の前払的性格を有するもの
      一般に「権利金」、「礼金」等と呼ばれているもので、契約に際して授受されますが、原則として借主に返還されません。
      なお、借地権等の設定に伴う場合には、独占的に使用収益することへの対価としての性格も含んでいる場合もあるとされています。
    3. 権利に譲渡的性格を付するもの
      「名義書換料」、「譲渡承諾料」と呼ばれているもので、賃借権等の譲渡や転貸に際し、貸主に支払うものです。承諾を得るための手数料的要素が強いとされています。
    4. 営業権の対価又はのれん代に相当するもの
      原則的に不動産に帰属するものではないので、評価的観点からは除かれます。
  3. 最後に

    以上の様に一時金には様々な種類があり名称があります。また、同じ名称でもその内容や性格が異なっている場合もあります。さらに、地域的な慣行等による違いもあります。一時金に関する判断を行う場合には、単なる名称にとらわれることなく、その性格や返還条件、契約締結の経緯、社会的慣行等を十分に考慮して個別に判断することが肝要です。

以上