コラム(詳細)

第104回「共有不動産」

2013.05/17

経済レポート2430号[平成24年12月18日]掲載

  1. 共有地の悲劇(コモンズの悲劇)  社会的ジレンマや環境問題を語るときに、「共有地の悲劇(コモンズの悲劇)」というモデルがあります。これは、ある集合体の中で、メンバー全員が協力的行動をとっていれば、メンバー全員にメリットはあるが、それぞれが利己的に行動する非協力状態になってしまえば、誰にとってもデメリットになってしまうことを示唆したモデルです。具体例として、共有の牧草地での羊飼い(牧草と羊の頭数の関係)がよく取り上げられます。
    不動産の場合も共有することによるメリット・デメリットがあります。今回は共有不動産について取り上げます。
  2. 共有不動産の評価  共有とは、持分として共同で所有していることをいいます。例えば、相続等で相続人A、B、Cの3名が各持分3分の1ずつで相続した場合、A、B、C3名の共有状態となります。仮にこの不動産の価値を900万円とした場合、この様な共有状態でAさんが自己の所有する持分3分の1を単独で売却しようとすれば、共有のリスクや制約等を考えるとこの不動産の価値の3分の1である300万円で実際の買い手をみつけるのは困難です。この様なことから、持分のみを単独で第3者に売却することを前提とした評価を行う場合には減価を行うことが一般的であり、この減価を共有減価といいます。
  3. 共有のメリット・デメリット  以上は、持分のみを単独で売却することを前提とした評価ですがメリットもあります。例えば、共有名義にして所得を合算することによってローンを借りやすくする。相続時には、分割相続か共有相続するかによって相続税が大きく変わるケースもあります。
    筆者の場合、仕事柄か、共有者間でいさかいとなるケースを多くみることから、基本的に共有することはお勧めしていません。
  4. 最後に  持分のみを単独で売却すること以外にも、共有の解消方法としては次のものもあります。
    ①現物分割
    現実に共有物をいくつかに分けて、それぞれを単独所有とする方法
    ②代金分割
    共有物そのものを売却してその代金を分ける方法
    ③価格賠償による分割
    自己の持分を対価を受けとって他の共有者に取得してもらう方法

以上