第109回「中古住宅」
2013.10/15
経済レポート2450号[平成25年5月28日]掲載
- はじめに 日本の全住宅流通量に占める中古住宅流通戸数の割合は、平成元年の8%から平成20年には13.5%にまで上昇しています。しかしながら、諸外国と比較するとアメリカは約90%、イギリスは約85%、フランスは約65%と大きく差があり、日本の新築指向、将来の住み替えを想定しない利用形態が窺われます。また、中古住宅は品質に関する情報が少なく中古住宅には抵抗があるとの声もあります。
今回は、不動産評価面からみた中古住宅についてとりあげます。 - レモン市場 レモンとは俗語で質の悪い中古車を意味します。実際に購入してみなければ、真の品質を知ることができないものが取引されている市場をレモン市場といいます。未知であるため結果として不良品ばかりが出回ってしまう市場となり、このような現象は逆選抜とも呼ばれています。不動産の場合も情報不足が挙げられるケースもあり、こうした情報の非対称性を解消していくことも課題といえます。
- 価格の透明性の向上等 こうしたなか、平成22年6月、国家戦略プロジェクトとして平成32年までに中古住宅流通市場・リフォーム市場を20兆円にまで倍増させることが目標として定められました。平成24年6月には、不動産流通市場活性化フォーラムから、不動産評価に関しては主として「価格の透明性の向上」と題し、現行の築年数を基準とした建物評価基準(手法)の見直しとして次の点などが指摘されています。
①耐震性、省エネ性能といった個々の住宅の品質を重視した評価
②インスペクションの結果や瑕疵の有無等を十分に把握して精緻に評価に反映
③不動産鑑定評価を、公正・中立的な第三者的立場からのセカンドオピニオンとして
活用
④リフォームが中古住宅価格に及ぼす影響を分かりやすく提示
⑤マンション分譲時価格等の情報のストック
⑥スケルトン(躯体等)とインフィル(内装等)を分離して評価する考え方の浸透
⑦共用部の管理状況等も踏まえた中古マンションの評価手法の確立
⑧建物評価のフォーム、マニュアルの統一化と普及促進
⑨リフォームを担保価値として評価する仕組みの検討 - 最後に 不動産鑑定士が行う不動産鑑定評価についても、この様な評価ニーズへ対応するために、現在、評価手法の合理化(現行は、原則として3手法を併用しなければならない)、評価のあり方、建物評価に係る規定の追加・見直し等が議論されています。
以上