第121回「中古の戸建建物評価の改善(その2)」
2014.10/14
経済レポート2498号[平成26年5月27日]掲載
- はじめに 前回、中古の戸建建物評価の改善について、現行の原価法の運用改善・精緻化により、評価を改善していく方向性であることにふれました。具体的には「取引時に、個別の状態にかかわらず一律に築後20~25年で市場価値をゼロとする慣行」を改め、個別の住宅本来の「使用価値(≠市場価値)」を考慮した適正な建物評価を行うこととし、加えてリフォームの実施状況等、個別の建物の状態についても適切に反映させる方向性が打ち出されています。
- 具体的な運用改善・精緻化の枠組み 良質な維持管理やリフォームが行われている住宅が適切に評価されるよう、①住宅を基礎・躯体と内外装・設備に大きく分類し、基礎・躯体については、性能に応じて、20年より長い耐用年数を設定し、例えば長期優良住宅であれば100年超の耐用年数とすることを許容する。②基礎・躯体部分の機能が維持されている限り、リフォームを行った場合は住宅の価値が回復・向上するととらえて評価に反映すること等を評価の改善の基本的な考え方として示しています。
- 市場への浸透策 今回の改善は、見方を変えれば、「不動産の価格はマーケットが決めるもの」という従来的な考え方から「マーケットそのものを変えて行こうとする試み」でもあり、不動産市場や金融市場への定着、プレイヤーのあり方等についても検討されています。
このなかで、特に指摘されているのは、今回の改善された評価方法によって算出された評価額は、現状においては市場価格と乖離する可能性が高いことです。そこで、取引等の局面においては、今回の改善された評価方法によって算出された評価額は「参考価格」とし、「市場での相場を勘案した評価額」と併せて提示する等の取組みが例示されています。(つまり、使用価値と市場価値の両方を把握できる環境を整備し、取引市場への新たな評価の浸透を図るものです。) - 最後に 今後、国土交通省に設置されている「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」では、宅建業者、不動産鑑定士、金融機関等における実務の改善、中古住宅関係金融商品の設計、空き家対策等との連動によるビジネスモデルの構築等の具体的な方策の検討を行うとしています。
なお、税金関係の評価については、今のところ、影響はないとされています。
以上
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