コラム(詳細)

第124回「調査範囲等条件」

2015.01/09

経済レポート2510号[平成26年8月26日]掲載

  1. はじめに  不動産鑑定士が鑑定評価を行うにあたっての統一的な基準である不動産鑑定評価基準及び同運用上の留意事項(以下、単に「基準等」といいます。)が平成26年5月1日に一部改正されました。(改正後の基準等は国土交通省のホームページにもアップされています。)改正後の基準等は平成26年11月1日から施行されます。
    前回は、改正点のうち新たに導入されたスコープ・オブ・ワークの概念についてとりあげました。今回はこの概念導入によって新設された「調査範囲等条件」について掘り下げます。
  2. 評価の条件とは  そもそも評価の条件とは何でしょうか。例えば地上に建物が存在する場合、この地上建物があることを前提とした場合の土地価格とこの地上建物がなく使用収益も制約されていないと仮定した場合の土地価格とでは評価額が異なるケースもあります。(前者を建付地、後者を更地といいます。)
    この様に、利用の状態や権利関係等に応じても評価額は異なることとなるため、条件設定が必要となります。(逆にいえば、その評価額が妥当する範囲を示すものともいえます。)
  3. 調査範囲等条件  多様化する評価ニーズに応じて、種々の条件設定が考えられますが、改正前の基準等では、想定上の条件を付加する場合には、実現性、合法性、関係者及び第三者の利益を害するおそれがないか等の3要件の充足が必要であり、基本的には多様な価値判断に対応できない状況にありました。これに対して今回の改正では、新たに「調査範囲等条件」を導入し、一定の要件の下で依頼者のニーズに可能な範囲で対応できることとしています。
    基準等では、具体例として次の4つを例示しています。
    ・土壌汚染の有無及びその状態
    ・建物に関する有害な物質の使用の有無及びその状態
    ・埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
    ・隣接不動産との境界が不分明な部分が存する場合における対象不動産の範囲
  4. 最後に  この様に今回の改正によって多様な条件設定が可能となりましたが、当然ながら、この条件設定は「利用者の利益を害するおそれがない」と判断される場合等に限られます。

以上

 

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