第137回「原価法 その4(減価修正の方法)」
2016.02/15
経済レポート2562号[平成27年9月29日]掲載
- はじめに 平成26年11月1日から施行された改正不動産鑑定評価基準では、原価法に係る規定が充実・見直しされています。そこでシリーズで原価法をとりあげています。
まず、原価法は、「価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である。(この手法による試算価格を積算価格という。)」と定義されています。
このうち、今回は減価修正の方法について解説します。 - 減価修正の方法 減価は、単に経年に伴う劣化だけではなく、マーケットにおける価値判断も考慮する必要があります。減価の程度は一定ではなく、むしろ古いことに価値が生じる不動産もあります。したがって、単に(機械的に)、減価償却的な考え方ではなく、減価額を求める方法には、「耐用年数に基づく方法」と「観察減価法」の2つの方法があり、各々長短があることから、両方法を併用し、相互に補完することとされています。
- 耐用年数に基づく方法とは 耐用年数に基づく方法は、耐用年数を基礎として減価額を把握する方法であり、定額法、定率法等があります。この場合、税法上の耐用年数を採用して機械的に耐用年数を設定するのではなく、まず、経済的残存耐用年数を判定し、これに経過年数を加算することによって耐用年数を求めます。(初めに耐用年数ありきではありません。)
- 観察減価法とは 一方、観察減価法は、有形的な状態の観察を基礎として、減価額を直接求める方法です。耐用年数といった概念を入れにくい物件(古いことに価値が生じる物件等)、実態が経年から大きくズレている物件、市場性が減退している物件等の評価においては特に補完機能を発揮します。
- 最後に(残材価額について) 建物の経済的残存耐用年数が到来し、市場価値が0円となったときには、廃材処分価値となります。一般的には「解体除去費用>廃材価値」のケースが多く、市場での評価を求める鑑定評価の立場からは残価率は0円となります。なお、会計上の残存価額は「会計上あらかじめ定められている耐用年数到来時において予想される市場価値を基礎として見積られるもの」ですので、概念が異なることに注意が必要です。
以上
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