コラム(詳細)

第147回「2020年問題」

2016.12/12

経済レポート2601号[平成28年7月19日]掲載

  1. はじめに  2020年は東京五輪・パラリンピックが開催される年です。現在、五輪需要等によって活況を呈している建設・不動産業界ですが、五輪後の2020年に、日本経済は様々な課題を突きつけられるとする「2020年問題」が警鐘されています。
    例えば、大企業にとってこの2020年問題は、バブル大量入社組や団塊ジュニア世代社員の賃金カーブのピークや昇進期にあたることから、人件費増・ポスト不足等の経営課題に直面することとなります。
    今回は、不動産の立場から、2020年問題についてとりあげてみます。
  2. 2020年をピークに世帯数も減少 日本では、今後、地方圏を中心に人口減少が急速に進むことが予測されています。2010年の人口1億2,806万人から、40年後の2050年には24%減の9,708万人にまでの減少が見込まれており、一般世帯数についても、2020年をピークに減少に転じると推計されています。東京都においても、2020年頃が人口のピークで、世帯数のピークは2025年頃とされています。
    この様な人口動態を前提とすれば、不動産に対する需要は基本的に(基調的に)減少することとなり、極端な話、生活そのものの維持が困難となる地域も現れる可能性があります。
  3. マンションの2020年問題  東京都住宅政策審議会が2015年9月に出した「東京におけるマンション施策の新たな展開について(答申)」によると、次の点が指摘されています。

    ①建物の老朽化と居住者の高齢化という「二つの老い」が進行
    ②耐震性不足や単独での建替えが困難なマンションが多数存在
    ③空き住戸の増加や管理組合の機能低下等によって管理不全に陥り、スラム化を引き起こす可能性

    これらは、マンションに限らず、店舗ビル、事務所ビル、特に住宅団地等においても同様の問題となる可能性があります。

  4. 最後に  「○○○○年問題」といった用語は、コンピューターの誤作動が懸念された2000年問題が走りでしょうか。本稿の2020年問題以外にも、2018年問題、2030年問題等が警鐘されています。今回とりあげた不動産の2020年問題は、2020年に突然訪れるのではなく、いわばゆでガエル的に事態は進行していることから、五輪特需がなくなる2020年までに対応策を講じるべきものともいえます。
    これからは、都市、地方といった大きな概念だけではなく、町単位といった狭い範囲でのエリア間、マンション物件間や住宅団地間においても、二極化がはっきりと進んでいく可能性があります。
    また、現在、全国の多くの市町村で改正都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画が検討中であり、これらの動向も注目されるところです。

以上

 

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