コラム(詳細)

第161回「賃料の改定」

2018.02/13

経済レポート2657号[平成29年9月19日]掲載

  1. はじめに  先般公表された平成29年の路線価では、東京銀座の最高路線価が平成4年のバブルピーク時を上回りました。また、バブル越えには至りませんが、平成20年のリーマンショック前の水準(いわゆるミニバブル期)を上回る都市が大都市を中心に続出しています。(広島市の最高路線価は、平成4年10,720千円→平成20年2,140千円→平成29年2,560千円とミニバブル期越えしています。)
    一方で、依然として下げ止まらない都市もある等2極化がますます鮮明になっています。
  2. 価格と賃料の関係  一般に、不動産価格と賃料の間には、相関関係があるといわれています。土地神話の時代には、不動産価格の上昇に伴って賃料が後追い的に上昇していったことから、「賃料の遅行性」などといわれていました。
    バブル崩壊を経て、賃料を資本還元して不動産価格を求める収益還元法が定着してからは、先に賃料ありき(フローありき)で、賃料は遅行的ではなくむしろ先行的であり、パラダイムシフトが起こったとする見解もあります。
    昨今は、2極化や低金利に伴う価格上昇の要素もあり、不動産価格と賃料の関係はより複雑であり破行的でもあります。
  3. 賃料の改定の評価  この様な不動産市況のなかで、賃料の改定の評価はどの様な考え方で行われるのでしょうか。不動産鑑定評価基準では次の様に定めています。「現行賃料を前提として、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点(「直近合意時点」という。)以降において、公租公課、土地及び建物価格、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料の変動等のほか、賃貸借等の契約の経緯、賃料改定の経緯及び契約内容を総合的に勘案し、契約当事者間の公平に留意の上決定する。」
    すなわち、現在合意している賃料を尊重し、この時点以降の事情変更やその他の諸般の事情を考慮のうえ改定するもので、いきなり、今現在の賃料水準にまで上げたり下げたりしないとするものです。
  4. 最後に(調停前置主義)  賃料の改定を巡って、争いとなった場合、いきなり裁判を起こすことはできません。賃料の増減請求については、裁判の前に調停をしなくてはならない制度となっています。(これを調停前置主義といいます。)これは、今後も契約関係を継続していくうえで、当事者の話し合いで解決した方が良いとする考え方からです。

以上

 

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