第181回「土地基本法の改正」
2019.10/11
経済レポート2738号[令和元年5月28日]掲載
- はじめに 新元号令和の第1回目です。平成元年に制定された土地基本法は、時代の変化にあわせて改正が必要との問題提起がなされていましたが、平成31年2月、その方向性が国土審議会土地政策分科会特別部会とりまとめとして公表されました。今回は、この「とりまとめ」から土地基本法の改正をとりあげます。
- 土地基本法とは 土地基本法は、土地問題(特に異常な地価高騰)に対処するために、土地に対する基本理念を明らかにし宣言したものであり、平成元年12月に成立しました。①公共の福祉の優先、②適正かつ計画的な利用、③投機的取引の抑制、④受益に応じた適切な負担の4つの原則からなります。
いわゆる宣言法ですが、④の原則から、課税に係る評価額は、固定資産税は7割評価、相続税は8割評価と大幅に引上げられ、地価税の導入にも至る等制度改正も進められました。(但し、地価税は平成10年から停止中)
その内容は、制定時(バブル期)の時勢柄、右肩上がりの発想で、「所有から利用へ」との志向を示す基調となっています。 - 改正の方向性 今般、公表されたとりまとめでは次の様な方向性が示されています。
・所有者が土地の利用・管理について第一次的な責務を負うこと
・所有者による土地の利用・管理が困難な場合に近隣住民、地域コミュニティ等が行う利用・管理には公益性があり、そのために所有権は制限され得ること
・国、地方公共団体は、利用・管理の促進策やその法的障害の解消のための施策を講じるべきであること
管理不全の土地が増加していること等を背景に、土地所有者の責務を明示するとともに、放置土地への対応、所有者以外の者の役割、管理の在り方、土地を手放すための仕組等についても言及しています。
- 最後 今後、土地基本法は平成元年の制定以降はじめての改正に向けて検討が深められていきます。人口減少社会に対応して土地政策を再構築し、令和2年までに改正が実現される予定となっています。
以上
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