コラム(詳細)

第16回「取引事例比較法と土地取引価格情報提供システム(その2)」

2005.07/26

経済レポート2073号[平成17年7月26日号]掲載

 国土交通省は、今夏から不動産取引当事者に大規模なアンケートを実施。来年3月にも個別の物件が容易に特定できないように配慮したうえで、取引価格情報の提供を同省のホームページ上で行う予定としています。そこで今回は、この土地取引価格情報提供システムについてとりあげます。

  1. 対象
    更地(土地価格)、マンション、土地付き建物
  2. 調査の方法
    国土交通省が法務省より登記異動情報の提供を受け、これを基に買主に郵送
    でアンケート調査を行う。アンケートには価格や広さに加え自由記入欄を設け取引の感想等も記入できるようにする。
    当初は東京・大阪・名古屋の3大都市圏で実施し(数十万件程度が見込まれる)、その後順次拡大予定(土地取引は全国で年間約160万件)。
  3. 公開の方法等
    公開する項目は、位置の概要、地目、取引時点、面積、取引価格、商業、住宅といった用途区分等。所在については、大字単位に止めるとしている。個別の物件が特定できないように加工されてインターネットで公開される予定。
  4. 今後の予定(スケジュール)
    この制度は、2004年3月に閣議予定された「規制改革・民間開放推進3カ年計画」によってその内容とスケジュールが示されています。それによれば、2004年度に仕組みを構築。2005年度中、つまり今年度中に、取引当事者の協力により取引価格情報の調査・提供を実施。2006年度には、価格情報の正確さが確保されること、個人情報保護の観点から情報提供方法に関する技術的側面が解決されることなどについて実績を通じて検証し、この結果などを踏まえ、取引価格情報提供制度の法制化を目標に、安定的な制度の在り方について検討し結論を得るとしています。
  5. その他

    諸外国の状況をみると、イギリス、フランス、オーストラリア、香港、シンガポール等では、取引価格を登記所が収集し、登記簿に記載して公開。アメリカ合衆国ではニューヨーク州、カリフォルニア州、メリーランド州等の36州で取引価格が登記所によって、または登記所の協力を得て税務署によって、一般に公開。ドイツでは、市または州単位に設置されている土地鑑定委員会が登記所、地籍担当部門、公証人と連携しながら、すべての土地取引に関する価格情報等を整備してデーターベースを構築しています。

    そもそも取引価格情報を公開することに関しては、「国が取引価格情報を集めて広く一般に提供することにより、土地市場の透明性が向上する等の社会、経済全体に広がる公益が生まれる。併せて、収集した情報は、国の土地に関する政策の企画、立案及び適時的確な発動に資するところが大きい」等の評価がある一方、個人のプライバシーの問題などの反対も根強くあります。

以上