コラム(詳細)

第41回「賃料評価(その10)…土地残余法に準じる手法(その2)」

2007.08/28

経済レポート2173号[平成19年8月28日]掲載

  1. はじめに

    前回、裁判所が独自に編み出した継続地代を評価する手法(土地残余法に準じる手法)の基本的な考え方についてふれました。それは、家賃収入を地主と借地人で分配し、そのうち地主に帰属する部分が地代であるとする考え方です。

  2. 具体的な純収益の分配の仕方

    家賃に基づく純収益を、建物への投下資本に対する報酬額(建物価格×利回り)、建物賃貸営業に対する報酬額(建物価格×利回り)及び土地への投下資本に対する報酬額(土地価格×利回り)の構成割合で按分し、地代を算定します。

    ステップ 1
    ↓ まず、純収益を求める。
    ↓ 家賃-費用=純収益

    ステップ 2
    ↓ 次に、投下資本・賃貸営業に対する報酬額を求める。

    A建物の投下資本に対する報酬額
    ↓      =全期間の平均的な建物への投下資本額(初期投資額の約1/2)×利回り

    B建物の賃貸営業に対する報酬額
    ↓      =全期間の平均的な建物への投下資本額(初期投資額の約1/2)×利回り

    C土地の投下資本に対する報酬額=土地の取引価額×利回り
    ↓   (注)A、B、Cの利回りはその性格が異なるため同率とはなりません。

    ステップ 3
    ↓ 最後に、地主に対する配分を行う。

    配分の計算

  3. 最後に

    この手法は、基本的には家賃を源資とし賃料負担力の観点からみた借主サイドの賃料と位置づけられ、また地代は家賃の一部であるという考え方に基づくものです。ただ、現行家賃を基礎とすることから借地人の賃貸経営手腕によって地代が左右されることになる。各報酬額を決定するための利回りの査定が難しい等の問題点も指摘されています。

    (参考文献)
    「判例タイムズ」1059号、1065号、1105号
    「金融・商事判例」1097号
    「賃料評価の理論と実務」賃料評価実務研究会編

以上