コラム(詳細)

第49回「CRE戦略(その7)…所有か賃借か」

2008.04/29

経済レポート2206号[平成20年4月29日・5月6日]掲載

  1. はじめに  CRE戦略(企業用不動産戦略)シリーズの第7回目です。今回は「所有か賃借か」です。企業の土地所有の意識について国土交通省のアンケート調査でみると、平成12年に賃借派が所有派を逆転したものの、賃借派が大勢を占めるまでには至らず、平成18年には所有派が再逆転。所有が有利と考える企業と賃借が有利と考える企業はほぼ拮抗しています。これは、ケースバイケースに応じて対応を考えようとする企業が多いことの現れとみられます。CRE戦略は企業価値最大化の観点から、さまざまな要素を勘案して所有か賃借かの意思決定を行うものです。
  2. 選択の基準 以下の事項等を整理し、個々の物件の条件に応じて、所有か賃借かを選択することが重要です。
    [1] ファシリティコスト(所有に伴う維持・管理・改修費・公租公課等のコスト)及び賃借に伴う賃料・共益費等のコスト分析による定量的観点
    [2] 自社の事業戦略との関連における定性的観点
    [3] 財務状況
    [4] 不動産市場の状況
  3. 本業と代替性(汎用性) 上記の事項を整理したうえで、「事業への貢献度」と「代替性(汎用性)」を組み合せて分析することが大切であり基本的な考え方は次のとおりです。
    ・ 本業に供する代替性(汎用性)の低い特殊な用途の不動産 ⇒ 所有
    ・ 本業へ供する代替性(汎用性)の高い一般的な用途の不動産 ⇒ 所有又は賃借
    ・ 本業へ供しない代替性(汎用性)の高い不動産 ⇒ 賃借
    ・ 本業へ供しない代替性(汎用性)の低い不動産  ⇒ できる限り所有も賃借もしない

    余談ですが代替性(汎用性)の程度は、特に建物の売却価格に大きな影響を及ぼします。例えば将来的な売却を視野に入れて建物を新築する場合には、設計等についてこのあたりの配慮が大切です(出口戦略といいます)。

  4. 最後に 平成20年に入り、不動産市場は大きな調整局面を迎えたと言われています。所有、賃借だけでなく、保有、賃貸、売却についても、この様なマーケットの転換期を踏まえ一層の経営判断を求められる時であると言えます。

(参考文献)
CRE戦略を実践するためのガイドライン(案)(国土交通省)等

以上