コラム(詳細)

第48回「CRE戦略(その6)…オフバランス」

2008.03/25

経済レポート2201号[平成20年3月25日]掲載

  1. はじめに

      CRE戦略(企業用不動産戦略)シリーズの第6回目です。今回はオフバランス(よくオフバラと略されます)についてとり上げます。例えば他社の債務を連帯保証しているなど、会社の資産や負債であってもバランスシート(貸借対照表)に計上されていないものはたくさんあります。オフバランスシートとは、文字どおりバランスシートから資産を外す(オフにする)ことをいいます。

  2. オフバランスの目的

     バブル崩壊後、過剰債務に迷んでいた多くの企業は、財務体質を改善するため保有していた不動産を売却しましたが、手放したくない不動産については証券化やセールスアンドリースバックといった手法を用いて、継続的に利用は続けながらも所有は移すというオフバランス取引を実施しました。この場合の(この時代の)主なオフバランス化の目的は、バランスシートから資産・負債を消すことで、総資産利益率等の財務指標を改善させ、外部からの評価(格付け)を高めることにあります。

  3. 具体例

     例えば、会社全体の資産が50億円で今年の利益が5億であるとします。この場合の総資産利益率は5億円÷50億円×100%で10%となります。そこで自社ビルを20億円で売却(セール)した後も引き続き貸借(リース)するというスキームでオフバランス取引を行うと(これをセールスアンドリースバック取引といいます)、会社全体の資産は30億円となり、総資本利益率は、5億円÷30億円×100%で17%と跳ね上がります(注.厳密には売却によって金利負担、維持管理費等はなくなりますが、新たに賃料が発生するなど利益も多少変動しますし、簿価や借入金等の関係で資産も単純に20億円減となるわけではありません)。この様に自社ビルを所有し続けるのではなく売却し賃借することによって(オフバランス取引をすることによって)総資産利益率はいっきに改善することになります。

  4. 最後に

     CRE戦略=オフバランス化戦略とよく誤解されますが、CRE戦略は基本的には何をもつのか何をもたないのかを問い、企業価値の最大化を狙うものであり、単にオフバランス化すなわち持たない経営を指向するものではありません。
    また、オフバランス取引は不動産以外でも主に金融取引の高度化・複雑化に伴い拡大していきましたが、最近は的確・透明な情報開示を求めるディスクロージャー強化の動きから、徐々にオンバランス処理されるようになってきています。不動産のオフバランス化の要件も厳格化される方向にありますので注意が必要です。

以上