コラム(詳細)

第64回「金融検査マニュアル(その1)」

2009.08/18

経済レポート2268号[平成21年8月18日]掲載

  1. はじめに(金融検査マニュアルとは) 不動産を担保にして資金調達を行う場合、その不動産の担保価値はどの様に把握されるのでしょうか?もちろん金融機関によって様々ですが、金融検査マニュアルではどの様な取扱いになっているのでしょうか?そもそも金融検査マニュアルとは「金融庁が金融機関に検査を行う際の具体的なチェックポイント等を定めた検査官のための手引書」です。ただ、金融機関もこのマニュアルを参考にして、貸出相手の経営状態や将来性を判断しているため、その内容は借り手企業の資金調達にも影響を与えます。逆に言えば、このマニュアルには金融機関から高く評価されるためのヒントがあり、その内容をよく知っていれば資金調達にも役立ちます。

    そこで、今回からシリーズで金融検査マニュアルにおける不動産担保をとり上げます。

  2. 担保の種類 金融検査マニュアルの担保には、優良担保と一般担保の2種類があり、不動産は一般担保に分類されます。
    [1] 優良担保とは、預金、国債等の信用度の高い有価証券および決済確実な商業手形のように、担保処分による回収の確実性が高く、かつ処分が容易で換金が可能な担保をいいます。
    [2] 一般担保とは、不動産担保や工場財団担保等のように、優良担保以外の担保で客観的な処分可能性があるものをいいます。

    なお、一口に不動産といっても、保安林、道路、沼等は、原則として一般担保とは認められない取扱いとなっています。
    余談ですが、平成19年の改訂で一般担保として動産担保及び債権担保が明記されました。最近、動産担保融資(ABL)は増加傾向にあります。

  3. 中小企業の不動産 金融検査マニュアルには、別冊として中小企業融資編があります。これには中小企業に対してはその特性に留意してきめ細やかな実態把握に基づく柔軟な判断が必要であるとの観点から、中小企業特有の具体例が記載されています。

    例えば、中小企業の場合、企業と代表者の財産や収入が一体となっている場合が多いことを踏まえて経営状態をみます。代表者等が企業を支援する意思がある場合には、代表者等の預金や不動産等の財産も、企業の返済能力に加えて判断を行う取扱いとなっています。

以上