コラム(詳細)

第101回「工場財団」

2013.02/15

経済レポート2418号[平成24年9月25日]掲載

  1. はじめに  先般、工場財団を評価させていただく機会に恵まれました。日本では土地と建物は別々の不動産です。ところが、土地・建物の不動産はいうに及ばず構築物や機械器具類に至るまで、工場に係るものを一括して法律上一個の不動産とみなす制度が工場抵当法による「工場財団」です。
  2. 工場財団の意義  工場抵当法が制定されたのは明治38年のことです。当時の企業の拡大に伴う資金調達が背景にあったのではないでしょうか。工場抵当法により工場財団は機械器具類等を含めて一個の不動産とみなされるため、一つの所有権の上に抵当権が設定されます。これは不動産だけでなくほぼ工場全体の交換価値を一つの抵当権でカバーできることとなりますので、主に資金調達や管理面でメリットがあります。工場財団の場合、担保掛目を優遇する金融機関もあるようです。
  3. 工場財団の組成  工場財団をつくることを組成(そせい)するといいます。不動産、機械器具類はいうに及ばず、電柱、構内通路、排水管、岸壁、ダム使用権といったものまで組成物件とすることができます(但し、一定の要件等もあります)。また、離れた工場であっても一つの工場財団として組成することもできます。
    なお、組成の際には、財団目録と工場の図面の作成が必要です。
  4. 最後に  この様に不動産だけでなく機械器具類等をも担保にでき管理も容易な工場財団ですが、現実には、工場は機械器具類の入れ替り等も頻繁にあることから、組成後しばらく経過した工場は現状と財団目録との不一致が生じるケースがかなりあります。
    また、不動産が財団の組成物件になると、その物件自体の個々の不動産登記簿は、甲区に「本物件は工場財団に属した」旨の記載がなされ、乙区には抵当権設定の記載はされません。工場財団の仕組みを知らずにこの物件自体の不動産登記簿だけをみて担保の設定がないと誤解してしまうケースもあるので注意が必要です。

以上