コラム(詳細)

第105回「既存不適格建築物」

2013.06/13

経済レポート2434号[平成25年1月29日]掲載

  1. はじめに  建物を建築した際には建築基準法に適合していたが、その後、法改正により適合しないこととなった場合には違反建築物となるのか?新しい規定に適合するように是正する必要があるのか?
    この様な建築物については、当初は適法であったため、一部の例外を除いて、違反とはならず、新しい規定に適合することも法的には求められません。この様な建築物のことを通常「既存不適格建築物」といいます。
    なお、元々違反建築物であったものが、その後の法改正により適合することとなった場合には、既存不適格建築物とはいいません。そもそも違反建築物のものは、違反建築物のままです。
  2. 既存不適格建築物を増築等する場合  新しい規定に適合することを求められない既存不適格建築物ですが、増築、改築、大規模の修繕・模様替えをする場合はどうでしょうか?この場合は、工事を施行するときであれば経済上の負担もさほどなく、安全性や衛生面も増すであろうとの考え方から、既存の適合していない部分も含めて現在の規定が原則的に適用されることとなります。
    したがって、増築等をする場合には、原則、適合していない部分も是正する必要があります(但し、一定の緩和措置があります)。
  3. 既存不適格建築物自体の評価について  既存不適格建築物は、この建物自体は違反ではないため、違反という観点での減価(マイナス)は発生しません。ただ、現在の基準に適合していないことから、安全性、衛生面、環境面等で機能的・経済的観点からみて、減価が発生している可能性はあります。
    なお、違反建築物の場合は、是正に要する費用(適法状態にするのにかかるお金)相当額を減価する取扱いが一般的です。
  4. 最後に(建付増価)  では、土地の評価に影響はあるのでしょうか?通常、土地は、建物等の定着物がない更地の状態の評価(更地価格)が最も高いといわれています。
    ところが、例外的に次の様な既存不適格建築物が地上にある場合はどうでしょうか?「現在の容積率は200%ですが、この建物は容積率の規制が厳しくなる前に建築されたもので、実際には容積率を400%使用しており、あと20年は経済的残存耐用年数が見込める建物である。」この場合、現行制度で利用可能な容積率200%を上回っている部分とそれが存続する期間は、通常の土地利用を上回る収益性を獲得できることから、更地価格を上回る評価ができる場合があり、この様な増価を「建付増価」といいます。

以上