コラム(詳細)

第138回「事業用不動産の評価(その1)」

2016.03/11

経済レポート2566号[平成27年10月27日]掲載

  1. はじめに  平成26年11月1日から施行された改正不動産鑑定評価基準では、事業用不動産に係る規定が充実化されています。そこで今回から、シリーズで「事業用不動産の評価」についてとりあげます。
  2. 事業用不動産とは  そもそも事業用不動産とは何でしょうか?一般論的には、店舗や事務所ビル等の事業のために利用される不動産のほか、投資対象とされるマンション等もこれに該当するといった文献もありますが、不動産鑑定評価基準上は、賃貸オフィスビル・賃貸アパートといった賃貸用不動産、自己使用の戸建住宅等ではなく、「当該事業の経営動向に強く影響を受ける不動産である」とし、代表的なものとして、次の4つを例示しています。
  3. 改正の概要と背景  不動産証券化の進展に伴い、証券化される不動産も、オフィスや共同住宅といった典型的な賃貸向け不動産(従来型のアセット)から、ホテルやヘルスケア、商業施設といったオペレーショナルアセットにまでその対象が拡大していると同時に環境整備も求められています。
    そこで、今般、制度インフラとしての鑑定評価基準においても事業用不動産を具体的に例示、定義づけのうえ、収益性を適切に把握して評価する方法や留意点等の規定を充実化し、証券化対象不動産の拡大に対応するものです。
  4. 最後に  証券化の進展・拡大は、資金調達方法の多様化であり、不動産市場の活性化にもつながります。今後、日本は高齢化に伴い医療や福祉関係の不動産ニーズが高まっていくことが予想されますが、米国ではヘルスケア施設を対象とするリートが既に約1割を占める状態にあります。(日本では平成26年11月に初の上場があり、現在3銘柄のヘルケアリートが上場しています。)
    次回以降で、具体的な評価方法についてとりあげていきますが、平成27年6月に公表された病院不動産を対象とするリートに係るガイドライン(国土交通省土地・建設産業局)では、「資産運用会社は、病院不動産の取引時に実施される不動産の鑑定評価が、評価対象不動産の事業特性を踏まえた当該事業の持続性・安定性について分析を行っていることを確認すること。」とされている等、その事業特性を踏まえた収益性について中長期安定的な観点から分析を行うことも必要とされています。

以上

 

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