第151回「タワーマンションの固定資産税評価見直し」
2017.04/11
経済レポート2617号[平成28年11月15日]掲載
- はじめに 平成29年度税制改正で、「タワーマンション(高さ60m以上又は20階建て以上の超高層マンション)に係る固定資産税の見直しを検討している」との報道がありました。これは、かねてから税の評価では低層階と高層階が同じ単価で評価されているのは市場の実勢にあっていない。高層階の物件は節税対策(いわゆるタワマン節税)として利用されているといった問題に起因しています。
現在のマンションの固定資産税の評価は、まず、一棟全体として評価し、次に、これを各部屋の床面積に応じて割り当てていく(配分する)ものであり、階層等によって評価額に差が生じない(床面積が同じであれば、評価額は変わらない)評価方法となっています。
今回の見直しでは、一棟全体の評価額は変えずに、実際の取引価格を踏まえて、高層階ほど高く、低層階では低くなるよう調整する方向が示されています。 - 階層別効用比、位置別効用比 マンションは、一般に高層階ほど分譲単価が上昇します。これは、日照、通風、眺望やステータス等が優れることによるものです。逆に、店舗は、1階と上層階を比べた場合、通常は、1階の方が集客力等に優れているため1階の方が分譲単価が高く(賃貸の場合は賃料単価が高く)なります。この様に、物件が所在する階層に着目してその価値を比で表したものが階層別効用比といわれるものです。
位置別効用比とは、南向き、北向き、間取り、エレベーターとの距離、角部屋等によって、同じ階のなかでも価値が異なることから、その位置等に応じた価値を比で表したものです。 - 鑑定評価における積算価格の評価方法 この様に、階層や位置によって価値が異なることから、マンションの一室の鑑定評価において積算価格を試算する場合には、まず、一棟全体の評価額を求め、次に、階層別効用比や位置別効用比により求めた配分率を乗じる方法をとります。(単に床面積に応じて配分する税務上の評価とは大きく異なります。)
- 最後に 今回の見直しでは、階層に応じた変更は行われるものの、同一階層内における位置別の差は反映されない様です。
また、今後新築されるものを対象とする方針であることから、建築時期の違いによって税負担が異なる状態ともなります。新築マンションはもとより、今後の中古マンション市場に与える影響も大きいのではないでしょうか。
以上
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