コラム(詳細)

第180回「平成5大ニュース」

2019.09/18

経済レポート2733号[平成31年4月16日]掲載

新元号令和まで、あと少しと迫りました。そこで、平成時代を振り返って、不動産鑑定評価にかかわる分野から、時系列で、平成の5大ニュースを取り上げます

  • 土地基本法の制定(平成元年12月成立)  土地問題(特に異常な地価高騰)に対処するために、土地に対する基本理念を明らかにし宣言したもの。①公共の福祉の優先、②適正かつ計画的な利用、③投機的取引の抑制、④受益に応じた適切な負担の4つの原則からなる
    なお、④の原則から、課税に係る評価額は、固定資産税は7割評価、相続税は8割評価と大幅に引上げられ、地価税の導入ともなった。(但し、地価税は平成10年から停止中

  • 借地借家法の制定(平成4年8月1日施行) 契約の更新がない(土地が必ず戻ってくる)定期借地権が新しく導入された。ただ、既存の契約は旧法の規定が適用されるため、現在は二重構造状態となっている。事業用定期借地権は今後、次々と満了時期を迎えることから、返還や再契約を巡って問題となる可能性がある
  • J-REIT(リート)等不動産証券化の進展(平成13年)  1960年代にアメリカで始まったREITは、日本では、平成13年9月、東京証券取引所に2銘柄が上場してJ-REITとしてスタート。平成30年5月末日時点で、上場は59銘柄、時価総額は約12.3兆円にまで拡大し、その投資対象も住宅、オフィスだけでなくホテルや物流施設等にまで多様化している
    評価についても、証券化対象不動産に関する特別な評価基準の必要性が提唱され、平成19年7月、不動産鑑定評価基準に「各論第3章」が新設。これによって、キャッシュフローの現在価値としての収益価格(DCF法)が明確化されると同時に、コンプライアンス、エンジニアリング・レポート、デューディリジェンスのあり方等が確立。利回り、割引率といった言葉もすっかり定着した
  • サブリース等賃料改定に係る最高裁判例(平成15年)  平成15年以降の一連の賃料改定の最高裁判例は、サブリース等だけでなく、その射程は一般の契約にも及ぶと解されることから、最高裁が判示した「賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきである。」は、その後の、賃料改定の評価手法を決定づけた
  • 競売評価の磨き上げ  平成3年当時4万件台であった競売の申立件数は、平成10年には7万件を突破する事態となり、バブル崩壊後の不良債権の早期処理の要請を背景に最低売却価額不要論を始め様々な議論が沸き起こった。特に、規制改革・民間開放の観点からも、司法(裁判所)だけでなく、民間にも競売を認めるとする民間競売制度は導入寸前にまで至った。
    この様な背景から、平成16年民法、民事執行法が大改正され、短期賃貸借制度の廃止、内覧制度の新設等が行われた。また、競売の評価を巡っては、平成17年4月から売却基準価額制度へ変更、評価の一層の適正化・標準化・迅速化、評価手法の導入等、大きな改善(磨き上げ)が行われている。
    なお、競売とは直接関係はないが、早期売却価額なる概念が登場したのもこの時期である

 

以上、私見5大ニュースを取り上げましたが、次点は2つあり、自然災害関係(地震、土砂災害等)と環境関係(土壌汚染、アスベスト、環境不動産等)を巡る評価。次々点が減損会計を始めとする会計上の評価でしょうか
平成元年に制定された土地基本法は令和2年までに大改正される予定であり、時代の変化を感じます。新元号令和の時代には、AI、不動産テックが花盛りとなり、評価やマーケットにも革新が起こるかもしれません

以上

 

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株式会社 小川不動産鑑定

代表取締役 小川 和夫
(不動産鑑定士)

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