コラム(詳細)

第196回「減損会計と不動産鑑定」

2021.01/15

経済レポート2798号[令和2年8月25日]掲載

  1. はじめに  今年の決算期は「A社は〇〇事業の減損損失20億円を計上」といったニュースが多かった様に感じたのは筆者だけでしょうか?減損とは、資産価値や収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなったものについて、投資家などが判断を誤ることがないよう、実態にあわせて帳簿価額を減額する会計処理をいいます
    減損の手順や兆候の把握、測定方法等については、会計上のルールが定められており、これに則って処理されることとなりますが、この過程のなかで不動産の評価については、不動産鑑定士による評価が利用されることが多くあります。そこで今回は、減損会計と不動産鑑定を取り上げます
  2. 財務諸表のための評価 不動産鑑定士が評価を行う場合、不動産鑑定評価基準(国土交通省事務次官通知)に則って鑑定評価を行うことが原則ですが、減損会計等に用いられる財務諸表のための評価は、加えて、「財務諸表のための価格調査の実施に関する基本的考え方(国土交通省)」及び「財務諸表のための価格調査に関する実務指針(公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会)」に準拠することが求められています。一般の評価に比べてハードルが高くなっており、これは財務諸表が社会に与える影響が大きいことや不動産鑑定士にも不動産の評価のみならず、企業会計制度にもある程度通じた知識が求められること等に起因しています
  3. 具体の評価 具体の評価の内容や進め方等については、割愛しますが、入口部分の話として、次の2つの価格概念を理解し、峻別しておく必要があります

    (注)重要性とは、企業会計上の重要性であり、企業会計基準等を適用する企業が判断する事項です。 

  4. 最後に この様に、減損会計をはじめとする財務諸表のための不動産評価は、一般の評価と異なる独特なものがあります。(一般の評価では、原則的時価算定、みなし時価算定という用語は使用しません。
    なお、近年は監査品質の確保の観点等から、監査法人が監査の際に、不動産鑑定士が行った評価書の内容をチェックすることも通常的に行われているようです
     

以上

 

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