第254回「不動産鑑定評価基準等」
2025.11/10
経済レポート3031号[令和7年6月24日]掲載
- はじめに 不動産の鑑定評価とは、「不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること」をいいます。国家資格である不動産鑑定士のみが、不動産鑑定業者の業務として、不動産の鑑定評価を行うことができるとされています(昭和三十八年法律第百五十二号不動産の鑑定評価に関する法律)。
不動産の鑑定評価を行うにあたってその拠り所となる基準を「不動産鑑定評価基準」といいます。今回は、この基準等をとりあげます。 - 不動産鑑定評価基準等
不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(以下、単に「基準等」という)は、不動産鑑定士が鑑定評価を行うにあたっての統一的な基準とされています。その内容は、基本的考察から始まって、不動産の価格を形成する要因、評価の方式、手順等全97頁にわたります。昭和39年に制定されて以来、不動産市場の変化に対応し、これまで累次の改正が行われてきました。
この基準等は、公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会会長宛ての国土交通事務次官通知であり、「前略~基準等を改正したので、通知する。~中略~十分に了知の上、貴所属会員に対する周知徹底を図られたい。」等とする通知文となっています(基準等は法律ではなく、通知です)。 - ガイドライン等
国土交通事務次官通知には、基準等のほかにも、不動産鑑定士が価格等調査を行う場合に、依頼者との間で確定すべき事項及び成果報告書の記載事項について定めるものとして、価格等調査ガイドライン及び価格等調査ガイドライン運用上の留意事項が平成21年8月に制定されています。また、基本的考え方を示すものとして、「財務諸表のための価格調査の実施に関する基本的考え方」、「証券化対象不動産の継続評価の実施に関する留意点」等もあります。
以上が国土交通省による基準等等ですが、上記のほかに公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会が公表する実務指針、業務指針、研究報告があり、なかでも実務指針については、「不動産鑑定士が当該業務を行う際には準拠するものとし、準拠できない場合又は他の方法による場合には、その合理的な根拠を明示しなければならない」とされています。 - 最後に 今回は、不動産鑑定の拠り所となる基準等等をとりあげましたが、不動産鑑定士の活動領域は単なる評価だけではなく、被災地支援活動(住家被害認定調査等)などにも及んでいます。
一方で、不動産鑑定士は減少と高齢化が進んでおり、特に地方部においてその傾向が顕著となっています。令和6年6月に閣議決定された骨太方針2024では、戦略的な社会資本整備として「公的土地評価を支える不動産鑑定業の担い手確保に取り組む。」としており、令和7年度中に取りまとめが行われる予定となっています。
以上
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(不動産鑑定士)
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