第6回「スティグマ(Stigma)」
2004.08/31
経済レポート2029号[平成16年8月31日号]掲載
- スティグマ(Stigma)
スティグマとは、もともとギリシアで奴隷・犯罪人であることを示す焼印のことで、聖痕の意で用いられる場合もあるが、英語で「汚点、汚名」という意味。周囲の否定的なイメージや心理的嫌悪感と捉えられる。不動産についていえば、墓地、自殺物件等があげられるが、これまで日本の不動産市場で議論されることは少なかった。
ところが、平成15年2月の土壌汚染対策法の施行等、土壌汚染に対する関心の高まりから、スティグマによる減価という問題がスローズアップされるようになり、現在では土壌汚染地(現在だけでなく過去にあった場合でも)についてはスティグマによる減価が存在するとの認識が一般的になりつつある。土壌汚染に関していえば「土壌汚染がある、または過去にあったということに起因する心理的嫌悪感等から生じる減価要因」がスティグマと定義される。 - 土壌汚染による減価
土壌汚染の被害としてはまず、健康被害があげられるが、財産的(評価的)な面から整理すると、次の減価要因が認められる。
[1]
浄化・改善費用
土壌汚染の除去、遮断封じ込め等に要する費用。[2]
使用収益制限による減価
例えば土地の一部分に封じ込め措置を行った場合、その部分の土地の利用に制限が生じることになる。[3]
スティグマ(心理的嫌悪感)による減価
上記のとおり、心理的嫌悪感による減価であるが、広義には汚染の有無にかかわらず風評被害等も含むと思われる。 - スティグマによる減価
「浄化後」は、浄化直後が最大で一般に時の経過とともにその減価は逓減していくと考えるのが適当である。「浄化前」は現に有害物質が実在することから、浄化後に比べて大きいと認められる。
あるアンケート調査によれば浄化後のスティグマ減価率は20~30%に集中したとするものもあるが、取引の実例も少なく今のところ、一般に数値化(標準化)することは困難であるといわれている。 - 土壌汚染地の評価
現在のところ標準となる評価方法は公表されていないが、先般、国税庁は次の原価方式を基本的な考え方としてとりまとめている。
土壌汚染地の評価額
=
汚染がないものとした場合の評価
–
浄化・改善費用に相当する金額
–
使用収益制限による減価に相当する金額
–
スティグマ(心理的要因による減価に相当する金額)
以上