コラム(詳細)

第12回「不動産投資ビジネス(4つの戦略)」

2005.02/22

経済レポート2052号[平成17年2月22日号]掲載

 景気の回復、低金利、再生ブーム等を背景に不動産投資を考える人が増えてきました。賃貸不動産を買って不労所得を得るノウハウ本から不動産金融工学といった新分野の研究まで。不動産投資をより高度なビジネスとしてとらえる傾向が高まっています。もっとも最近の賃貸不動産の価格はバブルとみる向きもありますが・・・
そこで、今回は不動産投資ビジネスを行う上での4つの投資戦略について触れます。

  1. ポートフォリオ運用
    分散投資を行うことによって一定のリターンを確保しつつ投資リスクを減らそうという発想です。用途(商業施設、オフィス、住宅等)や場所(大都市か地方か)の異なるものを組み合わせる等、特性の異なる不動産に投資するという戦略です。
    もっともリスク覚悟の集中投資もある意味立派な戦略ともいえますが。
  2. レバレッジ効果
    「レバレッジ」の語源は「てこ」で、小さな力で大きな力を得るとの意味です。自己資金だけではなく借入金を上手く組み合わせることによってより高い投資利回りを得ようとすることです。ただし、レバレッジを効かせすぎると借入金利上昇リスクや事業そのものの破綻リスクが高まるので注意が必要です。
  3. バリューアップ
    「バリューアップ」すなわち価値のアップのことです。単に近隣相場の上昇によって得られる売却益ではなく、様々な手法を行うことによって価値を上げることを意味します。改修(リニューアル)や用途転換(コンバージョン)、またキャッシュフロー改善等が挙げられます。要は知恵の出し所ともいえます。
  4. 出口戦略
    投下した資金をいつ回収するのかを常に意識する必要があります。不動産の最大の弱点はいつでも容易に換金できない(流動性が低い)ことです。このため、どのような方法で不動産を売却して投下資金を回収するのかというシナリオを想定しておくことが大切であり、このことを出口戦略といいます。競合相手をにらみながら購入価格を決定することだけでなく、転売価格をにらみながら購入価格を決定する。すなわちポートフォリオ、レバレッジ、バリューアップを考えあわせた出口戦略が重要となります。

 最後に余談ですが、「3千万円のマイホームを5百万円の頭金で買う」ことは、5倍のレバレッジを効かせて一点投資するということです。「住み続けるのだから地価の下落は関係ない」これは出口戦略の先送りです(なお、建物が古くなれば更地価格マイナス取壊費用で評価されます)。
もっとも、住宅は投資ではない、優良な賃貸住宅がない、所有することによるステータス・満足感・安心感、借金は励みになる、自分だけは失敗しない等の価値観もあります。

以上