第13回「最低売却価額から売却基準価額へ(その1)」
2005.03/22
経済レポート2056号[平成17年3月22日号]掲載
平成17年4月1日から、裁判所の競売では従来の最低売却価額制度が見直しされ、売却基準価額制度になります。改正法の経過措置により、実際に売却基準価額制度による入札が始まるのは2か月程度先のことですが、今回から2回にわたって、競売評価とこの新制度についてとり上げます。
-
競売評価の意義
競売による売却は、不当に低額で売却されることを防止し、多数の入札者による競争を経て、適正な価格で売却されることが必要です。一時、不良債権の早期処理の要請を背景に、最低売却価額不要論(評価の廃止を含む)もありました。今回の改正で、従来の最低売却価額制度はなくなり、売却基準価額制度が導入されますが、やはり執行妨害や談合等による不当な安値での落札を防止する必要性等から、「一定の額以上の価額での入札しか認めない」という入札にあたっての最低価額の制度の枠組みは維持されています。
-
競売の評価とは
競売の評価は、通常の評価よりかなり安いといわれています。「競売物件はお買い得」などといわれていますが、何故安いのか、評価の特性やリスクをよく理解しておくことが大切です。
一般に、競売の評価は入札にあたっての最低価額を算出する基礎となる額であるという位置づけと競売手続きの制度上必然的に伴う減価が反映されています。具体的には、まず通常の評価額を求め、これに競売特有の減価率を乗じるという方法がとられています。
通常の評価X 競売特有の減価= 競売の評価競売の手続き制度上の減価事由としては主として次のものが指摘されています。
- 売り主に当たる物件所有者の協力が得られないことが多いこと
- 競売不動産に対する心理的抵抗感があること
- 内覧制度を利用する場合を除き、原則として、買受希望者が事前に物件に立ち入って確認できないこと
- 現況地積や現況床面積が異なっている可能性があること
- 隠れた瑕疵が存在する可能性がある。しかも原則として現状有姿で引き渡されること
- 執行官による現況調査後の占有把握が困難であること
- 滞納管理費等の発生、または増額の可能性があること
- 物件明細書の記載は確定的な判断ではなく、既判力もないので、将来裁判によって法律関係が変更される可能性があること
- 代金は全額現金で速やかに支払わなければならないこと
- 買受申出保証金として、最低売却価額の約2割を納付しなければならないこと
- 代金納付は、売却許可確定から1ヶ月以内に限られること
- 物件の引渡しは、買受人が自ら物件所有者と交渉して行わなければならず、事案によっては法的手続きをとる必要があり、経済的負担、時間的負担及び身体的負担があること
- 情報提供期間が限られていること
- 開札期日開始までは、債権者はいつでも任意に取下げができること
以上