第23回「物件調査編その6(土壌汚染パート2)」
2006.02/28
経済レポート2101号[平成18年2月28日]掲載
前回から引き続き土壌汚染の初期的調査の2回目です。
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履歴調査
土地の使用履歴(以前どのように使用されていたか)、過去にリスクの高い使用方法で利用されていなかったか等をヒアリング、旧住宅地図、閉鎖登記簿、航空写真、旧地形図等で調査します。
なお、対象物件だけでなく周辺地についても調査が必要です。[1]
旧住宅地図
地域図書館や国公立の中央図書館等で入手できます。広島については県立図書館で昭和30年代のものから所蔵されています。[2]
閉鎖登記簿
法務局で入手できます。過去にどのような業種の企業が所有していたか、どのような種類の建物があったかなどが推測または判別できます。[3]
航空写真
国土地理院や日本地図センター等で入手することができます。
・国土地理院
HPアドレス http://archive.gsi.go.jp/airphoto/
・(財)日本地図センター空中写真部
HPアドレス http://www.jmc.or.jp/[4]
旧地形図
これも国土地理院等で入手することができます。 -
専門機関の調査
以上は、素人でも実行可能な初期的調査についてとりあげましたが、実際の土壌汚染の有無やその程度については専門機関による調査が別途必要となります。
専門機関による調査の流れは概ね次のとおりです。土地の使用履歴を登記簿謄本、空中写真などで検討し、現地踏査やヒアリングで得られた情報と統合して、土壌汚染の可能性
(リスク)を診断します。土地の表層部分約1m以浅の試料を採取して、室内分析を行ないます。汚染の範囲がどれくらい広がっているのか、面的に特定します。 深部 (10m程度)の試料を採取して汚染が浸透している範囲を3次元的に特定します。その調査結果によって、対策施工範囲を推定します。 -
土地取引に関する法的規制
土壌や地下水が汚染されている土地を取引する場合には、以下のような法的規制を受ける可能性があります。
[1]
重要事項説明(宅建業法35条)
指定区域である場合は、重要事項説明書で告知しなければなりません。[2]
重要事項の不告知(宅建業法47条)
土壌や地下水汚染の状況が買主の購入動機に大きな影響を与えるにもかかわらず、汚染にかかわる事項を説明しなかった場合には、宅建業務法違反となる可能性があります。[3]
瑕疵担保責任(民法570条)
買主が土壌や地下水汚染の有無を知らずに土地を購入した場合で、後に汚染が判明した場合には、売主は土地の瑕疵があったとして買主から損害賠償請求を受けたり、瑕疵が原因で契約目的が達せられない時には契約を解除される可能性があります。[4]
不法行為責任(民法709条)
土壌や地下水が汚染されていると知りながら(または知っていて当然なのに知らずに)適切な措置を講じないで土地を売却した場合で、買主などに健康被害を生じさせたり、土地の資産価値を低下させたりした場合には不法行為責任を問われ、損害賠償請求を受ける可能性があります。[5]
不利益事実の不告知(消費者契約法4条)
土壌汚染に関する事実を隠していた場合などは、契約を解除される可能性があります。
以上