第36回「賃料評価(その5)…差額配分法」
2007.03/27
経済レポート2153号[平成19年3月27日]掲載
- はじめに賃料の評価とりわけ継続賃料の評価は難しいとされています。継続賃料とは賃貸借等の契約が継続している途中で何らかの事情(事由)に基づいて現行賃料が不相当になったとして、それを改定し、当事者間で新たに設定し直される賃料です。新規契約時に設定される賃料(新規賃料といいます)は、地域性、マーケットといったある程度わかりやすい決定要素がありますが、本件の継続賃料は、評価の構成要因が複雑多岐で社会、法律、司法等の広範囲に及ぶ学際的業際的なものとなります。
継続賃料の評価手法としては、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法等があります(いずれも一短一長があり、絶対的といえる手法は存在しません)。本稿では差額配分法についてとりあげます。
- 差額配分法
現行賃料(実際の賃料)と新規賃料(仮に今新規で借りると想定した場合の賃料)との差額に着目した手法で次式により表されます。
〔差額配分法〕 現行賃料 + (新規賃料 - 現行賃料) × 差額の配分率 (注)差額の配分率は、差額発生の要因を広域的に分析し、さらに
契約事項等に関する分析を行うことにより適切に判断します。 - 具体例
〔事例〕 ・現行賃料・・・20万円、新規賃料・・・40万円、差額の配分率・・・50% このケースの場合、差額配分法による賃料は次のとおりとなります。
現行賃料 新規賃料 現行賃料 差額の配分率
20万円 + (40万円 - 20万円) × 50%=20万円+10万円=30万円つまり差額の20万円のうち50%相当の10万円を現行賃料に上乗せすることとなります。
この事例は賃料上昇期の典型的な事例です。上昇傾向にある賃料に対して急激に新規賃料の水準に近づけることは、法的安定性と経済的弱者保護の観点から妥当でない等の考え方や差額の配分は喧嘩両成敗的な解決策であるとの指摘もあります。また、実態も新規賃料>継続賃料であったため現実に即したものでもありました。この様に賃料の上昇期には比較的有効な手法として差額配分法は取扱われてきました。
ところが、賃料が下落した場合はどうでしょう?仮に、現行賃料が50万円で新規賃料が30万円とすると、差額はマイナス20万円となります。このマイナス差額をいかに取扱うかは次回にとりあげたいと思います。
以上