第37回「賃料評価(その6)…差額配分法」
2007.04/24
経済レポート2157号[平成19年4月24日]掲載
- はじめに(前回の復習)
前回は賃料上昇期における差額配分法について触れました。復習です。
〔差額配分法の式〕 現行賃料 + (新規賃料 - 現行賃料) × 差額の配分率〔賃料上昇期の設例〕 ・現行賃料・・・20万円、新規賃料・・・40万円、差額の配分率・・・50%
このケースの場合、差額配分法による賃料は次のとおりとなります。
現行賃料 新規賃料 現行賃料 差額の配分率
20万円 + (40万円 - 20万円) × 50%=20万円+10万円=30万円つまり差額の20万円のうち50%相当の10万円を現行賃料に上乗せすることとなります。
- 賃料下落期における差額配分法
賃料の上昇期にあっては比較的有効な手法であった差額配分法ですが、賃料の下落期にあってはマイナス差額の取扱いを巡って2説(マイナス差額配分容認説と新規賃料上限説)が対立しています。
〔賃料下落期の設例〕 ・現行賃料・・・20万円、新規賃料・・・10万円、差額の配分率・・・50%
(1)マイナス差額配分容認説の場合
現行賃料 新規賃料 現行賃料 差額の配分率
20万円+(10万円-20万円)×50%=20万円-5万円=15万円
(2)新規賃料上限説の場合
新規賃料まで一気に引き下げられ10万円となります。マイナス差額の配分を認める考え方は次の様な主張に基づきます。
[1] 契約当事者の過去の取り決めの内容や契約に至った経緯を尊重すべきである。 [2] 新規賃料を判断の基準とすることは求められた新規賃料の精度に疑いがあり問題が多い。 [3] 土地に帰属する収益の変化は上昇時だけでなく下落時においても分配すべきである。 [4] 「不動産鑑定評価基準」が差額の加減の仕方を加と減とで区別しておらず、減のときだけ一気に新規賃料の水準まで下げるべきという読み方はできない。 [5] 賃貸借には移転摩擦(引越費用や移転によって生じる種々のマイナスの影響)があるので、継続賃料は新規賃料よりも最低限移転費用ぶんより上回ってもよい。 [6] マイナス差額の一部を賃借人が負担するのは国民全体の痛み分けとして容認されるべきであり、一気に正常賃料にまで引き下げれば賃貸人にだけ不利益を負わせることになる。 一方、新規賃料上限説は次の様な主張に基づきます。
[1] 継続賃料は新規賃料を後追いし、実際支払賃料が新規賃料を超えるのは一種の異常値である。 [2] 差額配分法は新規賃料の方が実際支払賃料より上にあった時代の評価手法である。 [3] 経済価値に即応した賃料である新規賃料を超えた賃料を賃借人に対して説明できない。 【参考文献・・・賃料評価の理論と実務(賃料評価実務研究会編)】
以上