第39回「賃料評価(その8)…スライド法」
2007.06/19
経済レポート2164号[平成19年6月19日]掲載
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スライド法
スライド法は、現行の賃料に変動率を乗じて求めるもので、継続賃料評価の1手法です。
〔算式〕
・現行賃料 × 変動率 = スライド法による試算賃料
又は
・純賃料(現行賃料 - 現行賃料を定めた時点における必要諸経費等)
× 変動率 + 評価時点における必要諸経費等
= スライド法による試算賃料 -
変動率
変動率は、経済情勢等の変化に即応する変動分を表すものであり、土地及び建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数等を総合的に勘案して求められます。
個別の変動率の判定にあたっては、地代か家賃か、住宅用か商業用か工場用か、地域の動向はどうか等に加えて対象不動産の性格・契約内容等をも十分に踏まえ、各種指数の特性を考慮して一つの指数のみに頼ることを避け、経済物価指数、不動産価格指数、家賃指数等を総合的に検討した上で求められます。
なお、変動率を求める場合の各種指数を具体的に例示すれば次のとおりです。- 家賃指数(総務省)
- 市街地価格指数(財団法人日本不動産研究所)
- 建設物価建築費指数(財団法人建設物価調査会)
- 消費者物価指数(総務省)
- 卸売物価指数(日本銀行)
- 賃金指数(厚生労働省)
- GDP(内閣府 経済社会総合研究所)
- 商業動態統計(経済産業省)
- 企業向けサービス価格指数(日本銀行)
- オフィス募集賃料(各民間調査機関)
- 公租公課の変動率
- 周辺の類似家賃の変動率または改定率等
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最後に
この手法は、現行の賃料を基礎としてその後の経済事情の変動分を反映させるものです。借地借家法の賃料等増減請求権に示されるように経済事情の変化が不相当(賃料改定の必要)の原因であるならば、その変動分を求めて現行賃料から増減させるという考え方で、過去の判例でもこの手法により決定された例が多くあります。
ただ、現行賃料が既に不合理である場合、契約の個別性や対象不動産の特性を十分に反映しにくい、変動率の判定にあたってはこれといったズバリの指標がない等の欠点も指摘されます。
以上