第50回「CRE戦略(その8)…財務指標を用いたCRE評価(総資産利益率について)」
2008.05/27
経済レポート2209号[平成20年5月27日]掲載
- はじめに CRE戦略(企業用不動産戦略)シリーズの第8回目です。今回から、3回にわたって財務指標を用いたCRE戦略についてとりあげます。まず本稿は「総資産利益率」についてです。
総資産利益率(ROA:Return On Assets)は、企業が所有している総資産を使って1年間にどれだけの利益を上げているのかを示す指標です。利益(経常利益又は当期純利益) ÷ 総資産 × 100
= 総資産利益率(ROA)企業の総合的な収益性を測定する代表的な指標であり、当然ながら高ければ高いほど良いとされています。
- 具体例 では、利益2億円、総資産50億円のA社と利益3億円、総資産100億円のB社の総資産利益率(ROA)を比較してみます。
A社・・・利益2億円、総資産50億円の会社
2億円 ÷ 50億円 × 100 = 4%B社・・・利益3億円、総資産100億円の会社
3億円 ÷ 100億円 × 100 = 3%利益は確かにB社の方が多いのですが、効率よく儲けているのはA社の方であり、A社の方が収益力が高い企業としてB社より良い評価を受けるのが一般的です。
- 総資産利益率(ROA)を分解すると さて、この総資産利益率(ROA)ですが、売上高を介することによって次のように売上高利益率と総資産回転率に分解できます。
この様に分解することによって、利益率に問題があるのか、回転率に問題があるのか等、より深い分析が可能となり、現状把握や改善案策定の一助となります。
- 最後に 日本企業の総資産経常利益率は大企業で2~3%、中小企業で5%程度が一般的と思われますが、会社四季報、TKC、中小企業庁、日経等で指標のデータを把握することもできます。ただ、同業他社と比較を行う場合、貸借対照表上は不動産等が取得金額で記載されていることが多いので注意が必要です(厳密な意味で、同業他社と比較する場合は、簿価を時価評価に見直す作業が必要となります)。
(参考文献)
CRE戦略を実践するためのガイドライン(国土交通省)
企業価値評価(伊藤邦雄著)等
以上