第51回「CRE戦略(その9)…財務指標を用いたCRE評価(投下資本利益率について)」
2008.06/24
経済レポート2213号[平成20年6月24日]掲載
- はじめに CRE戦略(企業用不動産戦略)シリーズの第9回目です。財務指標を用いたCRE戦略のうち本稿は「投下資本利益率」についてです。
投下資本利益率(ROIC:Return On Investment Capital)は、企業が事業活動のために投じた資本(IC)に対して本業で、1年間にどれだけの利益(Return)を出せたかを測る指標です。当然ながら高ければ高いほど良いとされています。
前回とりあげた総資産利益率(ROA)と似ていますが、収益性(儲け度)をより正確に表わしているのがこの投下資本利益率(ROIC)だと言われています。 - 具体例 上場企業の投下資本利益率(ROIC)は平均5%程度。業種によってバラつきが大きいのが特徴の1つといわれています。15%以上が理想的ですが、10%は確保したいものです。
なお、日産自動車㈱は、現中期計画「日産バリューアップ」において、投下資本利益率(ROIC)を計画期間中の平均で20%(分母の投下資本は手許資金を除く)を確保することをコミットメントの一つに掲げています。「日産リバイバル・プラン」、「日産180」を経て、高水準の売上高利益率を維持しつつ、資本効率の向上を徹底追求するという、より高位の経営目標を志向できる段階に入ったと評価されています。 - 最後に 投下資本利益率(ROIC)が資本コストよりも低い場合には、この企業不動産は実質的に含み損の状態であり、企業価値向上に寄与していないと認められます。投下資本利益率(ROIC)の向上が図れない場合には他事業への転用や売却等を検討する必要があります。
(参考文献)
CRE戦略を実践するためのガイドライン(国土交通省)
企業価値評価(伊藤邦雄著)等
以上