第56回「CRE戦略(その14)…ファシリティコスト」
2008.11/04
経済レポート2231号[平成20年11月4日]掲載
- はじめに「ファシリティコスト」シリーズの第2回目です。前回はファシリティコスト(ファシリティコストとは、所有あるいは賃借して自社の事業のために使用する施設の維持・運用・管理に要する費用のことです)とマネジメントの視点についてふれました。今回は「ファシリティコストの分析方法」をとりあげます。
- ファシリティコストの分析方法
(1) 売上を基準とする方法
成長過程にある企業やM&Aを繰り返す企業の場合、成長に追随した適切なファシリティコストの配分に留意することが必要です。成長の先行指標として売上を採用し、売上に占めるファシリティコストの比率を指標として設定しコスト適正化を目指す方法です。(2) 支出を基準とする方法
成長が一段落し成熟期を迎える企業の場合、売上・支出とも安定することから、 関係者の理解しやすい指標として、支出に占めるファシリティコストの比率を採用し、コストの抑制、平準化を目指す方法です。(3) 利益と資産額
(1)、(2)のようなP/L(フロー)の視点とは異なり、利益と資産額、施設効率等を指標として評価する方法です。
(4) 各指標別の評価
ファシリティコストを構成する各項目別に単価を算出し個別に比較する方法です。具体的には、エネルギー費、清掃・衛生費、設備管理費、警備費用など、単価ベースでの比較評価指標を設定し、各施設間やベンチマークデータと比較評価することが考えられます。(5) 空間価値とファシリティコスト
CRE戦略では単なる財務的評価指標だけでなく、満足度や労働生産性など財務的評価指標のみでは評価が困難な非財務的評価指標も採用し、多面的に評価する必要があります。
例えば、事業所ごとに施設利用者の満足度と面積効率やファシリティコストを全施設でマッピングし、課題のある施設については移転など抜本的な見直しを検討することが考えられます。
(参考文献)
CRE戦略を実践するためのガイドライン(国土交通省)
不動産保有の意味を問う(三菱UFJ信託銀行等)等
以上