第55回「CRE戦略(その13)…ファシリティコスト」
2008.10/28
経済レポート2230号[平成20年10月28日]掲載
- はじめにCRE戦略(企業用不動産戦略)シリーズの第13回目です。CRE戦略とは、企業価値向上の観点から、経営戦略的視点に立って見直しを行い不動産投資の効 率性の向上を図っていくことですが、ひとつひとつの不動産についてみれば、[1] 収益(又は賃料)を高める、[2] 経費を抑える、[3] リスクを管理することであるといえます。不動産に関するコストには様々なものがあります。前回は建物のライフサイクルコストをとりあげました。今回から、 「ファシリティコスト」についてシリーズでとりあげます。
- ファシリティコストとはファシリティコストとは、所有あるいは賃借して自社の事業のために使用する施設の維持・運用・管理に要する費用のことです。運用管理期間中に発生するコストは、初期建設費の5倍以上に及ぶこともあります。
ファシリティコストは、次のとおり維持費、運営費、管理費から構成されます。
1.維持費:機能を一定水準に維持するための費用で次のものがあります。 (1)保有費:所有あるいは使用に伴う費用 ⇒賃借料、租税公課、保険料等
(2)特別経費:支出は伴わないが、計算上考慮する必要のある費用 ⇒減価償却費、資本コスト等
(3)保全費:機能を一定水準に維持するための費用 ⇒ 維持費、環境整備費等
2.運営費:施設を運営するための費用 3.管理費:施設を管理するための費用 - ファシリティマネジメント以上が、ファシリティコストですが、昨今は、単なるファシリティコストのカットといった経済的な面だけではなく、コストカットを行ったうえで、品質や労働生産性、社員のモチベーションの向上、施設利用者の満足度等を高めていくといった視点が欠かせません。
ファシリティコストは、経費全体の約13%にものぼると言われています。人件費を削減するよりは痛みも少なく、効果的であり、ファシリティマネジメントはCRE戦略の実践上重要なものとなっています。
(参考文献)
CRE戦略を実践するためのガイドライン(国土交通省)
不動産保有の意味を問う(三菱UFJ信託銀行等)等
以上