コラム(詳細)

第54回「CRE戦略(その12)…建物のライフサイクルコスト」

2008.09/23

経済レポート2225号[平成20年9月23日]掲載

  1. はじめにRE戦略(企業用不動産戦略)シリーズの第12回目です。CRE戦略とは、企業価値向上の観点から、経営戦略的視点に立って見直しを行い不動産投資の効率性の向上を図っていくことですが、ひとつひとつの不動産についてみれば、[1]収益(又は賃料)を高める、[2]経費を抑える、[3]リスクを管理することであるといえます。不動産に関するコストには様々なものがありますが、今回はこのうち建物のライフサイクルコストについてとりあげます。
  2. 建物のライフサイクルコストの意義建物を新築する場合建築費等の初期投資にどうしても目を奪われがちですが、ある試算によると建物のライフサイクルコストのうち初期投資の割合は約17%しかなく、運営や維持管理に要する費用は初期建築費の5倍以上に及ぶものもあります。建築費だけでなく、取得から処分までのライフサイクルコストを把握し、意識し、管理することは、CRE戦略上の意思決定にあたって重要なことです。
  3. 建物のライフサイクルコストとは 建物の企画→建設→運用管理→解体までの建物の一生にかかる費用のことをライフサイクルコスト(LCC)といいます。国土交通省による分類は次のとおりです。

    なお、初期建設費をイニシャルコスト、保全等の運用管理費をランニングコストといいます。

    建物のライフサイクルコスト

  4. 最後にライフサイクルコストを抑えるためには、企画・設計段階から、全費用をトータル的に検討し、諸対策を練ることが必要ですが、昨今のPCBやアスベストの様に当初は有効であったものが、後日想定外の事態となることで思わぬ出費が掛かることもあります。

    なお、最近、環境問題の高まりや国際的な会計基準とのコンバージェンス化等を背景に「資産除却債務」に関する会計処理が公表されており、平成22年4月1日以後開始する事業年度から、適用を受けることとなっています。詳細な解釈については未だ不明な点が多いのですが、有害物質等が含まれる有形固定資産などは除却に関する負担を財務諸表に反映させる必要が生じるものと思われます。

(参考文献)
CRE戦略を実践するためのガイドライン(国土交通省)等

以上