コラム(詳細)

第65回「金融検査マニュアル(その2)」

2009.09/22

経済レポート2273号[平成21年9月22日]掲載

  1. はじめに 金融検査マニュアルシリーズの2回目です。前回は金融検査マニュアルにおける不動産担保の取扱いについてふれました。今回は、「担保評価」についてとり上げます。まず、担保の評価額は「客観的・合理的な評価方法で算出した評価額(時価)をいう」となっており、そして、「必要に応じ、評価額推移の比較分析、償却・引当などとの整合性のほか、処分価格の検証において、担保不動産の種類別・債務者区分別・処分態様別・実際の売買価額の傾向など、多面的な視点から検証を行う必要がある」とされています。
  2. 担保評価このマニュアルには客観的・合理的な評価方法について掘り下げた具体的な記述はありません。評価の方法に一律に決まったものはなく、現実的には、多くの評 価は金融機関の内部で路線価や地価公示価格等を用いて、内部的な一定の評価基準(ルール)に則って、簡易な査定方法で行われているのが実情のようです。

    また、マニュアルには次のコメントがあります。

    [1] 現況に基づく評価が原則であること。
    [2] 現地を実地に確認すること。
    [3] 権利関係の態様を調査すること。
    [4] 法令上の制限(建築基準法、農地法等)を調査すること。
    [5] 土壌汚染、アスベスト等の環境条件にも留意すること。

    [5]は、昨今の環境問題は担保評価に際して無視できない状況であることから、平成19年2月の改訂で、明確化の観点から追記されたものです。実際にどの 程度まで調査を行うかは、問題発生の蓋然性の高さや債務者の状況によってさまざまであり、一概には決められません。しかし、問題が明らかになっている場合 にそれを勘案しないことは、担保評価の態度として不適切と考えられています。

  3. 評価の頻度(評価の見直し)
    [1] 債務者区分が破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先である債務者の評価額の見直し(再評価又は時点修正。以下同じ。)は、直近のデータを利用して、少なくとも年1回は行わなければならず、半期に1回は見直しを行うことが望ましいとされています。
    [2] 債務者区分が要注意先である債務者の評価額についても、年1回見直しを行うことが望ましいとされています。

    なお、上記以上の一般の担保評価については概ね3年ごとに評価替を行う例が多いようです。

  4. その他上記の外に、留意点として、次項が記載されています。
    [1] 担保評価額が一定金額以上のものは、必要に応じて不動産鑑定士の鑑定評価を実施していることが望ましい。
    [2] 賃貸ビル等の収益用不動産の担保評価に当たっては、原則、収益還元法による評価とする(但し、金融機関が有するすべての収益担保物件について、精緻な収益還元法による評価を求めるという意味ではありません)。
    [3] 特殊な不動産(ゴルフ場等)については、市場性を十分に考慮した評価となっているかどうかを検証する。

以上