コラム(詳細)

第66回「金融検査マニュアル(その3)」

2009.10/27

経済レポート2278号[平成21年10月27日]掲載

  1. はじめに 金融検査マニュアルシリーズの3回目(最終回)です。前回まで、「不動産担保の取扱い」、「担保評価額」についてふれました。今回は「処分可能見込額」に ついてとり上げます。まず、処分可能見込額とは、「算出した担保評価額(時価)を踏まえ、当該担保物件の処分により回収が確実と見込まれる額をいう」と なっており、「この場合、債権保全という性格を十分に考慮する必要がある。なお、評価額の精度が十分に高い場合には、評価額と処分可能見込額が等しくな る」とされています。
  2. 処分可能見込額このマニュアルには「客観的・合理的な方法で算出されているか検証する」とありますが、掘り下げた具体的な記述はありません。現実的には、多くの場合、担 保の種類や物件の所在地等に応じて金融機関が独自に定めた「掛目」を担保評価額に乗じて算出する方法が採られているのが実情です。
    担保評価額 × 掛目 = 処分可能見込額

    また、このマニュアルでは、使用する掛目が合理的であるか否かの検証を求めており、合理性が確保されない場合には土地・建物ともに70%以下の掛目を使用するとしています。

    なお、掛目の合理性についての検討が乏しいまま、安易に70%を乗じてそれを処分可能見込額としている例などがあり、これが担保評価能力向上の妨げの一 因となっている可能性もあること等から、平成19年2月の改訂で、安易に70%以下の掛目に依存することのないよう明記されました(即ち、合理性が確保さ れれば70%を超える掛目を使用することも可能です)。

  3. 評価の精度が十分に高い場合以上のように、通常は担保評価額に掛目を乗じることとなりますが、「評価の精度が十分に高い場合」には掛目は不要で、「担保評価額 = 処分可能見込額」として取扱われることとなります。このマニュアルでは、評価の精度が十分に高い場合の具体例としての次の場合をあげています。
    [1] 相当数の物件について、実際に処分が行われた担保の処分価格と担保評価額を比較し、処分価格が担保評価額を上回っているかどうかについての資料が存在し、これを確認できる場合
    [2] 直近の不動産鑑定士による鑑定評価額がある場合(但し、鑑定評価の前提条件等によっては、鑑定評価額に所要の修正を要する場合があります。また、簡易な方法で行われた評価は含まれません)
    [3] 競売における買受可能価額がある場合
    [4] 上記以外でも合理的な根拠がある場合
  4. 最後に以上、3回にわけて、金融検査マニュアルにおける不動産担保についてとりあげました。この金融検査マニュアルには、金融機関から高く評価されるためのヒントがあり、その内容をよく知っていれば資金調達にも役立ちます。

以上