第67回「公益法人制度改革と不動産評価」
2009.11/24
経済レポート2282号[平成21年11月24日]掲載
- はじめに
平成20年12月新しい公益法人制度がスタートしました。従来の公益法人は国所管のものが7千弱、都道府県所管のものが1万8千強、合計約2万5千ありましたが、現在では新制度の施行により、自動的に「特例民法法人」となっています。今後は、「公益社団・財団法人」又は「一般社団・財団法人」のいずれかに移行するか解散することになりますが、猶予期間は5年間(平成25年11月末日)となっています。
そこで、今回は、この公益法人制度改革に係る不動産評価についてとりあげます。
- 時価評価が求められる局面
一般社団・財団法人に移行しようとする場合について、貸借対照表上の資産を時価評価のうえ貸借対照表を作り直す必要はないとされていますが、公益目的支出計画の基礎となる公益目的財産額については算定する必要があるとされています。
貸借対照表 ⇒ 時価評価の必要なし(×) 公益目的財産 ⇒ 時価評価の必要あり(○) - 公益目的財産額の算定方法について
では、公益目的財産のうち不動産に関する評価方法については以下のとおりとされています。
[1] 土地の評価方法について
固定資産税評価額や不動産鑑定士が鑑定した価額が考えられるとされています。[2] 減価償却資産の評価方法について
建物等の減価償却資産については、時価評価資産に含めないもの(従って帳簿価格が原則となる)とされていますが、不動産鑑定士による鑑定評価を妨げない取扱いとなっています。[3] 例外
長期にわたり継続的に事業を行う場合にそれらの事業に継続して使用することが確実な資産(建物等の減価償却資産を含む)については、当該資産が継続して使用されることを前提に算定した額を評価額とすることができるとされています。上記の様な資産とはゴルフ場や病院等のような収益事業用資産が該当すると思われます。具体の評価は、当該事業の拘束下にあることを前提とした評価であり、今のところ事業経営に基づく収益価格が標準となるとして運用される予定です。
- 土地の使用に係る費用額について
公益法人は、公益目的事業比率が50%以上であることが求められますが、この公益目的事業比率の計算にあたって自己所有地の使用にかかるみなし費用額(土地の賃借に通常要する賃料の額)の算定方法については、[1]不動産鑑定士等の鑑定評価、[2]固定資産税の課税標準額を用いた倍率方式、[3]賃貸事例比較方式や利回り方式など法人の選択に委ねるとされています。 - 最後に
以上が、公益法人制度改革に係る制度的な不動産評価の主なものですが、約1世紀にわたって続いた制度の改革であり、今般の制度改革を契機として、各界で事業内容の見直しや資産の再構築(分割、譲渡はもとより会館の新規取得等)など、大きな動きが進むのではないかと見込まれています。
以上