第70回「PRE戦略」
2010.02/23
経済レポート2293号[平成22年2月23日]掲載
- はじめに あるデータによれば、日本の不動産の金額規模は約2,300兆円、そのうち企業が所有している不動産は約490兆円(国土面積の約14%)、国・地方公共団体が所有している不動産は約470兆円(国土面積の約41%)となっています。サブプライムローン問題に端を発した米国発の金融危機は日本のミニバブルも崩壊させましたが、日本の不動産は投資対象としてまだまだ大きなポテンシャルを有しているとみられており東京の都心では既に次のインフレに備えた仕入がそろそろはじまっていると見る向きもあります。
こうしたなか、不動産を戦略的観点から見直す動きが近年盛んであり、CRE戦略、PRE戦略等と呼ばれています。CREとはCorporate Real Estate 即ち企業用不動産の意味であり、本稿でも以前シリーズで16回に渡って連載しました。
今回は、もう一方の、PRE戦略についてとりあげます。 - PRE戦略とは PREとはPublic Real Estateの略で、地方公共団体等が所有する公的不動産のことをいいます。CRE戦略は、企業価値向上の観点から、戦略的に不動産投資の効率性の向上を図っていくことでしたが、このPRE戦略は、「公的不動産について、公共・公益的な目的を踏まえつつ、財政的な視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうとする考え方」です。
- PRE戦略の必要性 PRE戦略が必要となった背景としては次のものがあげられます。
【(1)不動産を取り巻く状況の変化】
1. 土地神話の崩壊 2. 相当数の低・未利用地所有の増加 3. 不動産のリスク資産化(土壌汚染、アスベスト、耐震、価格変動リスク等) 4. 公共施設の老朽化 5. 少子高齢化、市町村合併の進展等に伴う、学校や教育施設の需要の減少等公共施設に対するニーズの変化 6. コンパクトシティの進展等の都市構造の変化 【(2)地方公共団体を取り巻く状況】
1. 資金調達状況の変化(起債が許可制から協議制へ等) 2. 地方財政の悪化 3. 財政健全化に向けた制度改正(公会計制度の見直し、財政健全化法等) - 最後に 今後は、PRE戦略の名のもとで、公的不動産について戦略的なマネジメントが全庁的・継続的に展開されていくものと予測されます。その際、民間活力の導入やアウトソーシングの活用を検討することも考えられます。
企業によるCRE戦略、公によるPRE戦略とも、従来型の管財的な不動産管理からの脱却であり、不動産保有の意味を問うなかで、不動産そのものやそれを取り巻く人々が知恵も汗も出す時代となりました。
以上