第69回「改正農地法と農地の評価」
2010.01/26
経済レポート2289号[平成22年1月26日]掲載
- はじめに 前回は、改正農地法の概要についてとりあげました。今回の改正は戦後の農地改革以来の大転換であり、この改正農地法による農地制度の見直しの基本は「農地の流動化(農地の貸し借り等)」と「農地転用の厳格化」でした。今回は、農地の評価についてとりあげます。
- 農地をめぐる状況
日本の農地面積は昭和36年の609万haをピークに463万haにまで減少しています(ピーク時の約75%水準)。一方、耕作放棄地は38.6万haにまで増加。農業従事者数は約197万人。平均年齢は64.6歳と高齢化が進んでいます。また、農地の利用集積が十分に進んでいないこと等が課題となっています。
なお、近年、家族的農業経営から、企業的な農業経営への脱皮を支援することを目的に農業経営診断など農業経営に対して経営的コンサルティングを行う動きも盛んです。 - 農地価格の状況
全国農業会議所が実施した調査によると、全国の純農業地域の農地価格は10aあたり田は約150万円(1,500円/m2)、畑は約100万円(1,000円/m2)の水準にあり、一方で、それに比べて市街化区域内の農地の価格は数10倍の水準にあるとの調査結果が出ています。これは、市街化区域内の農地は、法的に宅地への転用が容易なことと一般に中心市街地に近いこと等の諸条件を反映して、「宅地になることへの転換期待」を織り込んで価格形成されていることが主な要因と考えられます。
また、この調査によると、作付規模が3~5haの田の農業経営に基づく純収益は10a当たり年間19千円であり、仮に田を購入した場合、投資額(購入代金)を回収するまでに約80年(1,500千円÷19千円≒79年)かかると試算しています。 - 最後に
純農地の評価は、基本的には取引事例比較法で求めますが、今回の農地制度の見直しに伴い、企業の農業経営への参加、転用の厳格化等が進んでいけば、農業経営に基づく収益価格や宅地になることへの転換期待の織り込み度合いに変化が生じ、農地価格のみならず地代についてもその価格形成に影響を及ぼす可能性があります。
以上