第76回「税務評価と鑑定評価」
2010.08/31
経済レポート2318号[平成22年8月31日]掲載
- はじめに前回、7月1日に発表された路線価についてとりあげました。元々この路線価は相続税等の算定の基準となるものですが、ほとんどの市街地で路線価図が作成されていることと国税庁が発表していることなどを背景に土地取引にあたっても参考とされるなど関心が高まっています。そこで今回は路線価(税務評価)と時価について少し掘り下げてみます。
- 路線価は8割評価平成4年から路線価は地価公示価格の80%水準で設定されています(このことから8割評価とよばれます)。それ以前は50%程度の水準の評価であったことから、当時は、不動産は金銭に比べ相続財産としては有利であり、不動産投資を助長する誘因ともなっていました。なお、固定資産税の評価額は平成6年度の見直しから70%水準で設定されています。
- 税務評価相続税法の第22条に「財産の価額は当該財産の取得の時における時価」によると一般的な規定が置かれていますが、具体的な不動産評価の方法は、実務上は財産評価基本通達によって計算されているのが実情です(これに対して評価の方法は通達ではなく法定化すべきであるという議論もあります)。前面の路線価を基礎に通達に拠る画地計算等(間口、奥行の長さ等による調整等)を行って評価額を求めます。不動産の価格は多種多様な要因によって形成されそれらの分析も一律にはいかないこと等から、ややもすれば画一的な現行の評価方法については批判もある一方で、多くの裁判例では、租税負担の公平さ、評価の簡便さ、徴税費用の節減等の見地からみて合理的であるともされています。
- 最後に以上のように現状の税務の評価方法は、必ずしもマーケットの時価と一致するとは限りません。特に次の様な場合には開差が発生する可能性が高く、不動産鑑定士による鑑定評価を実施することも有効と考えられます。
- 時価の変動が著しい場合
- 需給ギャップの著しい物件
- 需要が乏しいマーケット環境にある物件
- 道路がない(又は建築基準法上の道路に接面しない)土地
- 間口の狭い土地
- 市街化調整区域内の土地
- 極端に高低差がある土地
- 凹凸のある土地
- 騒音、振動、日照阻害、臭気のある土地
- 山林
- 面積の大きい土地
- 著しい不整形地
- 権利関係が輻湊した物件
- 収益性が重視される物件…賃収ビル、底地、アセットマネージメント物件等
以上